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「身体診察」は本当に必要なのか
身体診察の良書3冊

2013/04/23

 前回は当初の予定を変更して、「眼底診察・聴診」についての良書を紹介した。今回は本来の予定通り「身体診察」の良書を紹介する。

 我々は日常診療で、まず患者さんに問診をとり、それから身体診察をする。このときふと疑問に思うことがある。我々の診療には本当に「身体診察」が必要なのか、と。眼底検査の所見がどうであれ他の検査をすればいいし、呼吸音の聴診所見がどうであれ胸部X線写真を撮ればいい。心音の聴診所見がどうであれ、心エコーをすればいいではないか。つまり、「どうせ検査をするのであれば、身体診察するだけ時間と労力の無駄ではないのか?」と思うのだ。

 「身体診察」の必要性というこの疑問に対して、筆者自身は「より正確な診断と治療のために身体診察は絶対に必要である」と答えるであろう。ここで「身体診察」の必要性が無くならないのは、検査が絶対ではないからである。検査が絶対ではない端的な例としては、患者検体の取り違えがある。患者の検体を間違えているのに気づかず手術を含めた治療をしてしまった例がある。また、部位を左右取り違えて手術してしまった例がある。

 これらの事例の主治医は本当に患者自身を診察していたのであろうか?もしも本当に患者自身を診察していたら、手術部位が違うのではないか? などと疑問に思い、手術前に考え直す機会があったのではなかろうか?

 このような極端な例を除いても、検査には必ず偽陽性や偽陰性がある。どのような検査にも必ず存在する測定の限界を補うためにも、身体診察は絶対に必要だと筆者は考えている。患者を直接診察せずに検査に進む診療など、どんなに医療が進化した社会でも起こりえないし、あってはならないことだと筆者は確信している。したがって、「身体診察」は「医療面接」とともに医師の基本的技能であり続けるはずなのである。

 さてこの「身体診察」のバイブルとも呼ぶべき書籍と言えば、もちろん福井次矢、井部俊子 日本語監修、徳田安春、石松伸一、岸本暢将 監訳 『ベイツ診察法』メディカル・サイエンス・インターナショナル、2008(分類:古典・原典・教科書、評価:★★★、推奨時期:医学生~)である。2008年に初めて邦訳されたが、それ以前は原書しかなかった。

著者プロフィール

田中和豊(福岡県済生会福岡総合病院 総合診療部主任部長・臨床教育部部長)●たなか かずとよ氏。慶應大理工学部を卒業後、医師を目指す。94年筑波大医学専門学群卒業。横須賀米海軍病院、聖路加国際病院、アルバートアインシュタイン医科大、ベス・イスラエル病院などを経て、2012年より現職。

連載の紹介

医学書ソムリエ
良い医学書は良い海図のように、臨床の大海原の航海を確実に楽にしてくれるもの。しかし、数多く出版される医学書のどれを読んだらよいのでしょうか。本連載では、筆者の田中和豊氏が、忙しいあなたの代わりに様々な医学書に目を通し、「これは良い」と思ったものだけを紹介します。

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