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「言葉による診療」を研ぎ澄まそう
問診の良書

2012/08/27

 前回までに「診断学」と「症候学」の医学書を取り上げた。今回からは実際の診療の各局面で役立つ医学書を紹介する。

 我々が診察をするときには通常、「問診」から始める。まずはこの「問診」について考える。ここで、患者診療の最初に行う「問診」は一体何のためにするのかを考えよう。

 患者診療でまず最初に「問診」を行う第1の理由は、患者の訴える症候についての情報収集である。ただ単に情報を収集するだけならば、患者自身が記載した問診票の情報をそのまま使えばよいはずである。わざわざ患者に質問をするのは、書面からの情報だけでは不十分だからである。

 患者が自己申告する情報は、必ずしも診断に必要な情報だけとは限らない。仮に診断のために必要な情報であったとしても、整理されておらず支離滅裂なこともある。「めまい」のような言葉は、改めてこちらから質問しないと、その患者がどのような意味で使用しているのか分からないこともある。

 逆に、患者が特に意識して記載したことではなくても、診断のために重要な情報も存在する。従って、患者の自己申告である問診票の情報に加え、わざわざ患者に「問診」を行うのは、診断資料としての病歴作成のため、さらなる情報の収集や内容確認、整理といった、情報の加工・修正をするためと言える。

 次に患者診療で「問診」を行う第2の理由は、患者の訴えている症候に対する診断に「当たり」をつけることである。病歴作成とは、単に患者情報を羅列して記録することではなく、患者の傷病の診断のために病歴を「編集」することでなければならない。その作業のために「問診」が絶対に必要なのである。言い換えると、収集した病歴情報は「問診」を通じて「診断」という「文脈」を与えられることになる。

 実際、ある論文によると、内科外来の患者の76%が病歴だけで診断が付き、12%が身体診察で、11%が検査で診断が付くということである(文献1)。

 このように診断のための重要な編集作業である「問診」には、それなりの熟練が必要である。その問診技術についての医学書がローレンス・ティアニー、マーク・ヘンダーソン 編、山内豊明 監訳 聞く技術 上・下 答えは患者の中にある 日経BP、2006(分類:教科書、評価:★★★、推奨時期:後期研修医~)である。

著者プロフィール

田中和豊(福岡県済生会福岡総合病院 総合診療部主任部長・臨床教育部部長)●たなか かずとよ氏。慶應大理工学部を卒業後、医師を目指す。94年筑波大医学専門学群卒業。横須賀米海軍病院、聖路加国際病院、アルバートアインシュタイン医科大、ベス・イスラエル病院などを経て、2012年より現職。

連載の紹介

医学書ソムリエ
良い医学書は良い海図のように、臨床の大海原の航海を確実に楽にしてくれるもの。しかし、数多く出版される医学書のどれを読んだらよいのでしょうか。本連載では、筆者の田中和豊氏が、忙しいあなたの代わりに様々な医学書に目を通し、「これは良い」と思ったものだけを紹介します。

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