これまでの2回で「診断学」の医学書を紹介した。今回は「診断学」の延長として「症候学」の医学書を紹介したい。
「診断学」は「診断」自体について考える総論の学問であるのに対し、「症候学」はそれぞれの症候についてどのような鑑別診断があってどのように診断すればよいのかを考える、各論の学問である。
診断学について考える「臨床推論」においては、本連載の第1回で扱った「アナログ診断学」の思考法を「直感的思考 intuitive process」と呼び、第2回に扱った「デジタル診断学」の思考法を「分析的思考 analytical process」と呼ぶそうである(参考文献1)。そして、臨床の現場では、臨床家がこの2つの思考法を使い分けたり、あるいは、同時に駆使したりして診断を行っている。診断におけるこの2つの側面はdual processes modelと呼ばれている。そして、症候学についてもdual processes modelは当てはまる。
症候学において、直感的思考でアプローチする「アナログ診断学」を突き詰めれば、熟練したティアニー先生のようなスナップショット診断が可能となる。この芸術的なスナップショット診断は長年のパターン認識の積み重ねの成果である。
このように研ぎ澄まされたスナップショット診断を集めた書籍が、山中克郎、佐藤泰吾編著『ダ・ヴィンチのカルテ Snap Diagnosisを鍛える99症例』 シービーアール, 2012(分類:通読書、評価:★★★、推奨時期:医学生以降)である。
書名近くに付記した、「分類」「評価」「推奨時期」の各項目については、第1回の最初のページに説明があるので、参照いただきたい。
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著者プロフィール
田中和豊(福岡県済生会福岡総合病院 総合診療部主任部長・臨床教育部部長)●たなか かずとよ氏。慶應大理工学部を卒業後、医師を目指す。94年筑波大医学専門学群卒業。横須賀米海軍病院、聖路加国際病院、アルバートアインシュタイン医科大、ベス・イスラエル病院などを経て、2012年より現職。

連載の紹介
医学書ソムリエ
良い医学書は良い海図のように、臨床の大海原の航海を確実に楽にしてくれるもの。しかし、数多く出版される医学書のどれを読んだらよいのでしょうか。本連載では、筆者の田中和豊氏が、忙しいあなたの代わりに様々な医学書に目を通し、「これは良い」と思ったものだけを紹介します。
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