Cadetto.jpのロゴ画像

Dr.西野の「良医となるための道標」

まずは診察の仕方から

2014/03/31
西野徳之(総合南東北病院消化器センター長)

患者の診察の仕方から紹介しよう。

「人が健康か病気かは、話を聴き、注意深く観察し、適切な質問を発し、理にかなった臨床的決断を下すことによってのみ知ることができる」
「患者の顔を観察するようにしなさい」
「顔の皮膚の色を観察するようにしなさい」
――『ドクターズルール425 医師の心得集』 福井次矢訳(南江堂)

 五感を研ぎ澄まして診療に当たること。見る、聴く、触る、嗅ぐ、味わう。もちろん、嗅覚、味覚を診療に使うことは少ない。でも、宿酔のアルデヒド臭など、時として嗅覚も使わなればならないことがある。意識を集中して診療をするという意味では、やはり五感と言った方がわかりやすいだろう?

 それともうひとつ。第六感も大事にしてほしい。一見元気そうに見えるけど、どうも変だなという患者にたまに出逢う。その場では診断がつかないが、時間とともに容体が変化することがある。そういう心配のある患者はなるべく入院させて、一晩経過をみる方がよい。「変だな」と思える第六感を養うことも大切。

「患者があなたに語っていないことに耳を傾けなさい」
「時間は最も偉大な診断医である。うまく利用すること」
――『ドクターズルール425 医師の心得集』 福井次矢訳(南江堂)

 さて診察だが、入室時の患者の雰囲気を伺うところから始まる。

 苦悶表情がないかどうか。もしあれば、それは痛みなのか精神的な心配なのかを考える。そして患者の顔を見る。顔色や表情を伺う。マジマジと見つめてはいけないよ。あくまでもさりげなく。

 女性だと色白の方もいるが、顔色不良であれば貧血を疑って、瞼結膜を見せてもらう。息が速くて肩で息をするような方は、首筋を診る。頸静脈が怒張していれば、心不全の診断が可能だ。肺炎を疑って、酸素飽和度を測定することも考える。高齢者では肺炎でも熱が上がらないことがあるからね。

 高齢の方には話し方もゆっくり、聞きやすいように語りかける。小柄なおばあちゃんなら、腰を折って、眼の高さを合わせて話しかけることも大切。『上から目線』ではだめだよ。

 お腹が痛くてまっすぐ歩けないような方は、急性腹症の可能性が高い。その場合は椅子に座らせずに、すぐに診察台に寝かせて、問診も寝たままで行う。

 問診や診察が病態の診断の手掛かりになることは多いので、情報収集もしっかりと。身長、体重も必ず確認する。しばらく体重を計っていないのなら、計測する。本人は自覚していないのにずいぶん体重が変化していることもある。成人の場合、増えても減ってもよくない。喫煙状況と飲酒の程度も、最初に必ず確認してカルテに記載する。両方ともがんを含め、健康に非常に影響するからね。

 熱がある時は必ず舌を診ること。脱水かどうかは舌を診れば一目瞭然。どのくらい点滴をすべきか、入院させるべきかの参考にもなる。

 胸部の聴診は左右均等に呼気・吸気をともに聴くんだよ。

著者プロフィール

西野徳之(総合南東北病院〔福島県郡山市〕消化器センター長)●にしの・のりゆき氏。1987年自治医科大学卒。旭川医科大学第三内科、利尻島国保中央病院院長、市立根室病院内科医長などを経て2000年10月より現職。

連載の紹介

Dr.西野の「良医となるための道標」
今の臨床研修カリキュラムに足りないもの。それは医師としての心構えや倫理観、患者との接し方を学ぶことではないか? 研修医指導に情熱を傾けてきた著者が、「医師としてのあるべき姿」を熱く語りかける、『良医となるための100の道標』(日経BP)。その一部をご紹介します。
『良医となるための100の道標』 好評販売中

 「患者を診るということは、家族とともに、患者の心とも向き合うこと。その不安、焦燥、葛藤、そして悲しみを共有することなのだ。その心を受けとめることが君にはできるかい?」  医療という大海原に飛び込んだ研修医に、親として、兄として、友として、本音で語りかける、良医となるための「100の金言集」。(西野徳之著、日経BP社、2800円税別)

この連載のバックナンバー

この記事を読んでいる人におすすめ