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Dr.西野の「良医となるための道標」

初心忘るべからず

2014/03/17
西野徳之(総合南東北病院消化器センター長)

 それは僕が大学に入学して間もなく、新入生向けのオリエンテーションを受けていた時のこと。先輩医師から次のようなエールをいただいた。

 「君たちは大変な受験勉強を乗り越えて、晴れて医学生となり、『人のために役立ちたい、病を患っている患者を救ってあげたい』という気持ちを持っていると思う。純粋なその気持ちをいつまでも保ち続けてほしい。
 というのは、医師となって5年、10年と忙しい日々を過ごしていると、疲れも出てくるし、体力もなくなる。人並みに『夜中に起こされる心配なくゆっくりと休みたい』『週末ぐらいは家族とゆっくり過ごしたい』と思うようになるもの。
 それでも当直、救急患者の診察も医師の大切な仕事のひとつ。放棄することは許されない。くじけそうになった時には、今の気持ちを思い出してがんばってほしい」

 『初心忘るべからず』。この時の僕は、「そんなことは当たり前じゃないか。僕は10年たったとしても、夜中でも休日でも患者のために診療をするぞ」と心に誓った。大学1年の時から数えて15年。医師の卵であった頃の先輩の言葉は、今でも鮮やかに心に残っている。初心は忘れていないが、それは理想であって、現実にはそれが難しくなっていることも十分に理解できる歳になった。だからこそ、初心の志が重要なのだと思うのだ。価値観というものは、年月と状況、そして経験によって変わってくるもの。

著者プロフィール

西野徳之(総合南東北病院〔福島県郡山市〕消化器センター長)●にしの・のりゆき氏。1987年自治医科大学卒。旭川医科大学第三内科、利尻島国保中央病院院長、市立根室病院内科医長などを経て2000年10月より現職。

連載の紹介

Dr.西野の「良医となるための道標」
今の臨床研修カリキュラムに足りないもの。それは医師としての心構えや倫理観、患者との接し方を学ぶことではないか? 研修医指導に情熱を傾けてきた著者が、「医師としてのあるべき姿」を熱く語りかける、『良医となるための100の道標』(日経BP)。その一部をご紹介します。
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 「患者を診るということは、家族とともに、患者の心とも向き合うこと。その不安、焦燥、葛藤、そして悲しみを共有することなのだ。その心を受けとめることが君にはできるかい?」  医療という大海原に飛び込んだ研修医に、親として、兄として、友として、本音で語りかける、良医となるための「100の金言集」。(西野徳之著、日経BP社、2800円税別)

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