患者さんが入院するとき、看護師さんから「クリティカルパスを使いますか?」と聞かれることがあります。クリティカルパスでは、入院何日目に検査をするとか、どんな点滴をするかなどを前もって決めますが、私が病院勤務をしていた頃は、正直なところ、こんなふうに思っていました。
「病気の進行は人によって違うのに、同じような検査、治療でいいのだろうか?」
「看護師さんは一生懸命やってるけど、やるメリットって何?」
プロジェクトマネジメントから派生したクリティカルパス
クリティカルパスの考え方は、プロジェクトマネジメントという方法論から派生したものです。「クリティカル(critical)」には「危篤の」という意味もあり、医療現場にはそぐわないという考えから、「クリニカルパス」と呼ぶ場合もありますが、本質的には同じものです。
プロジェクトマネジメントは、もともとはエンジニアリングやミサイル開発などの技術開発分野で、大型プロジェクトの期間を短縮するために生まれました。その後、米ソ冷戦時代の宇宙開発においてアメリカで確立し、オリンピックなどの大型プロジェクトだけでなく、医療現場にも導入されるようになったのです。
つまり、「ビジネスの世界には、プロジェクトマネジメントという『物事(=プロジェクト)をうまく進める方法』があるのだから、医療にも取り入れましょう」ということなのです。
物事を上手に進めるための方法が確立しているのであれば、知っておいて損はありません。ミサイル開発のように「工場で製品を作る」ことと「病気を治療する」ことを同じ方法論で扱うことに違和感を覚える医師もいるかもしれません。ですが、実際に取り組んでみると、参考になる部分が非常に多いことに気が付きます。
プロジェクトマネジメントの手順とは
ここでは、個人的な行動を例に、プロジェクトマネジメントの考え方を説明しましょう。
例えば、「専門医試験に合格する」「英語ができるようになる」「来年彼女と結婚する」といったプロジェクトを成功させるために、どのようなマネジメントをすればいいのでしょうか。
(1)まず、「いつまでにやる」という期限を決めます。期限のないプロジェクトはありません。「英語ができるようになる」、「金持ちになる」といった目標ではなく、「来年末までにTOEIC900点」、「10年後に年収3000万」というように、期限付きの具体的な目標を設定しましょう。
(2)そのプロジェクトは何のためにするのか(=目的)、それによって何を得たいのか(=目標)をはっきりさせます。ゴールがないとどこに向かっていけばいいか分かりませんし、モチベーションも保てません。
(3)関係する人(ステークホルダーといいます)をリストアップします。結婚であれば、結婚相手や家族、出席者など。試験合格が目標であれば、協力者(配偶者や同僚)がいるはずです。続いてその関係者たちの要望を確認しましょう。
新規に会員登録する
医師または医学生の方は、会員登録すると記事全文がお読みいただけるようになるほか、ポイントプログラムにもご参加いただけます。
著者プロフィール
大竹真一郎●おおたけ しんいちろう氏。1998年神戸大卒。同大第3内科に入局後、関連病院に勤務。2007年からは医局を離れ、菊名記念病院、けいゆう病院、中野サンブライトクリニックで勤務。

連載の紹介
Dr.大竹のおすすめBizスキル
「ビジネスの世界では当然とされているノウハウやスキルを取り入れれば、医師ももっと効率的に仕事ができる」—。医療以外の職種にも幅広い人脈を持つ大竹氏が、多忙な医師生活に役立つビジネススキルや思考法を紹介します。
この連載のバックナンバー
-
2015/09/08
医師・医学生限定コンテンツ -
2015/03/12
医師・医学生限定コンテンツ -
2014/10/02
医師・医学生限定コンテンツ -
2014/08/07
医師・医学生限定コンテンツ -
2014/01/08
医師・医学生限定コンテンツ