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往診リストから消えた人に思う

2022/02/09
織田うさこ

 もうずいぶん前なのですが、あるお宅に往診に行っていた頃のことを思い出しました。

 事務所のような門構えのご自宅。玄関のアルミサッシの引き戸を引いて中に入ると、一瞬躊躇するくらい、いろんなものが積まれていました。レトルトカレーやカップラーメンの箱、紙が茶色く変色するくらい古い雑誌に新聞紙。賞味期限の切れたパン、洗濯したのかしていないのか分からない大量の衣類、ブランケット、郵便物……。

 足の踏み場を確認しながら家の中へと進み、部屋のドアを開けると、
「あら!? どなた?」

 頭の高いところできっちりとお団子に結んだ髪、真っ赤な口紅、濃い化粧の小柄なおばあさんが、棚に手をつきながら立っていました。

「往診に伺いました」
 私が返事すると、
「そんなこと聞いてないわよ!?」と金切り声。

著者プロフィール

織田うさこ(皮膚科医・内科医)●市中病院での初期研修修了後、皮膚科医として勤務していたが、必要に迫られて、内科も勉強しながら従事している。家庭医として地域医療に貢献。何事にも必死になりすぎるタイプ。

連載の紹介

うさコメント!
2007年、小西真奈美さん主演で放映されたドラマ「きらきら研修医」のモデルとなった織田うさこ氏が、身の回りの医師について、患者との関わりについて、医療現場で起こるさまざまな出来事について、独自の視点で語ります。

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