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老いるからこそ、死ぬからこそ、いとおしい

2021/02/05
織田うさこ

 皮膚科の往診をしていると、いろいろな患者さんに出会います。先日は、胃瘻の周囲がただれてきたとのことで、ご自宅に診に行きました。

 90代後半、寝たきりのおばあさんです。

「胃瘻の周りがしょっちゅう、赤くなるんです。皮がむけて、傷になって……」
 介護している息子さんが言いました。

 まずは診せてください、と、おばあさんの寝間着をめくりました。

「?」

 胃瘻が無い。
 きれいなおなかです。

 すると息子さんが、
「ここです」
と、おなかのシワめがけてズボッと手を突っ込みました。

 息子さんの右手は、驚くほど深く入り、左手で周囲の皮膚を何度もかき分けると、はるか奥に胃瘻が見えました。

 完全に、腹部の肉の中に埋もれています。

著者プロフィール

織田うさこ(皮膚科医・内科医)●市中病院での初期研修修了後、皮膚科医として勤務していたが、必要に迫られて、内科も勉強しながら従事している。家庭医として地域医療に貢献。何事にも必死になりすぎるタイプ。

連載の紹介

うさコメント!
2007年、小西真奈美さん主演で放映されたドラマ「きらきら研修医」のモデルとなった織田うさこ氏が、身の回りの医師について、患者との関わりについて、医療現場で起こるさまざまな出来事について、独自の視点で語ります。

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