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医者の正義と、患者の幸せと

2019/11/08
織田うさこ

 医療に、絶対的な正解はないと、いつも思います。コミュニケーションに正解がないのと同様に。

 定期的に訪問診療している80代の男性は、認知症がひどく、定期的に投薬している薬を変更すると、激怒して薬剤師さんに怒鳴るそうです。血圧はいつも180~200台で、心不全も腎不全もあるので、本当はもっと血圧を下げたい。利尿薬だって調節したい。でも、できません。

 いっときは心不全が悪化し、ご本人もすごくつらそうだったので検査や入院を勧めたのですが、すべて拒否。それどころか、
 「俺は病気なんかしたことない! どこも悪くない! 検査?バカなことを言うな!」
と怒り出しました。

 「しんどそうな顔をしてらっしゃるので、心配なんです」
と説得を試みると、
 「死ぬときは死ぬ、人間は誰でも寿命がある!」
と正論(?)をぶつけられ、何も治療はできませんでした。
 親族に連絡しても、「好きなようにさせてやってください、どうなっても文句は言いませんし、死んだら死んだで構いません」と言われ、私たちは手をこまぬくのみでした。

 結局ご本人の生命力が強かったのか、いつの間にかなぜか自然回復され、今に至ります。

著者プロフィール

織田うさこ(皮膚科医・内科医)●市中病院での初期研修修了後、皮膚科医として勤務していたが、必要に迫られて、内科も勉強しながら従事している。家庭医として地域医療に貢献。何事にも必死になりすぎるタイプ。

連載の紹介

うさコメント!
2007年、小西真奈美さん主演で放映されたドラマ「きらきら研修医」のモデルとなった織田うさこ氏が、身の回りの医師について、患者との関わりについて、医療現場で起こるさまざまな出来事について、独自の視点で語ります。

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