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ターミナルケアと春もみじ(前編)
先生分かる?この痛み

2018/07/24
織田うさこ

 訪問診療の依頼があり、前立腺癌のターミナルの方の診察に行きました。50代の男性で癌の進行が早く、皮膚や骨にも転移を起こしているとのこと。急激にADL(日常生活動作能力)が落ち、ほぼ寝たきり状態で、仙骨部に褥瘡ができていると聞いていました。

 ご自宅に到着し、介護をされている奥様に案内されて2階の部屋に入ると、ベッドには大柄でがっしりとした体格の男性が横になっていました。側には訪問看護の名札を下げた2人の女性が立っていて、私の顔を見ると挨拶してくれました。

「Aさん、仙骨部の褥瘡を先生に診てもらいますね」。看護師さんたちがAさんにそう話しかけると、「ゆっくり頼む」という返事がありました。看護師さんはかけ布団をめくり、Aさんのおむつを外しながら、「この通りの状態で横を向くのもままならなくて……。私たちが体を支えていますから、素早く診てくださいね」と私に言いました。
 見ると、下腹部、鼠径部、大腿のあちこちに皮膚転移と思われる粟粒大の結節がありました。浮腫もひどく、大腿は2倍くらいに膨れ上がり、皮膚がはち切れそうになっていました。ゆっくり横を向いてもらうと、仙骨部にはびらんが数カ所あり、中央には壊死を伴う10cm以上の大きな潰瘍がありました。

「麻薬も使い始めたのですが、痛みがひどくて洗浄も、軟膏を塗るのも、ガーゼを当てるのも無理なんです」と困った顔の看護師さん。「仙骨部以外にも、浮腫がひどいせいで皮膚が擦れて、内ももや鼠径部にもびらんができています」。
 確かに、関節のしわにそって皮膚が密着しているところに紅斑とびらんができていて、褐色のどろりとした浸出液でどろどろになっていました。

著者プロフィール

織田うさこ(皮膚科医・内科医)●市中病院での初期研修修了後、皮膚科医として勤務していたが、必要に迫られて、内科も勉強しながら従事している。家庭医として地域医療に貢献。何事にも必死になりすぎるタイプ。

連載の紹介

うさコメント!
2007年、小西真奈美さん主演で放映されたドラマ「きらきら研修医」のモデルとなった織田うさこ氏が、身の回りの医師について、患者との関わりについて、医療現場で起こるさまざまな出来事について、独自の視点で語ります。

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