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金魚から学んだ命の「愛おしさ」

2017/10/23
織田うさこ

 我が家に“2匹”の新しい家族が増えました。ことの始まりは、夏祭りの金魚すくい。ビニール袋の中でいきいきと泳ぐ、1匹の小さな金魚を手に帰宅しました。

「…さて、どこに移そう」

 私は魚も金魚も飼ったことがないし、飼い方も分かりません。当然、我が家に水槽なんて立派なものはありません。それでも、いつまでも狭いビニール袋の中ではかわいそうだと思い、とりあえず、手近にあった虫かごに水道水をじゃばーっと入れて、金魚を移しました。

「金魚って、どうやって飼うの? 飼ったことある?」と夫に尋ねると、
「俺、小さい頃に飼っていたことあるよ。エサはご飯粒をつぶして小さくちぎってあげていた」

 その言葉を信じてやってみると、早速ご飯粒をパクリと食べてくれました。

「よかった!」

 その後ウンチもして、「これで大丈夫」と安心していたのですが……。その日の夜には、だんだん元気がなくなってきました。全く泳がず、じっと同じところに留まったままです。金魚すくいで取った金魚だから、もしかして寿命がすごく短い? それとも病気? どうしたらいいのかな……。

 翌日の日曜日も、丸1日ぐったりしたままでした。かろうじてひれが動く程度で、ご飯粒をあげてももう食べようとしません。どうしたらいいのか途方にくれたまま、月曜になりました。

 出勤してすぐ、職場のおばちゃん看護師に、
「お祭りの金魚すくいで持ち帰った金魚が、もう死んじゃいそうなんです……。寿命?」と話すと、
「えっ、1週間くらいは最低でも生きるけど? 長生きする子は何年も生きて、フナみたいにでっかくなる子もいるし」
「そうなんですか?!」
「先生、ブクブクは入れてる?」

 ブクブクというのは、エアーを入れる機械です。虫かごに水道水を入れて放り込んだだけですから、当然そんなものはありません。

「ブクブク入れなきゃだめですよ、すぐ死んじゃう。水は? カルキ抜きしてます?」
「カ、カルキ抜き?」
「水道水を一晩おいて、カルキを抜かないと」
「帰ってきて水道水をそのまま入れました。カルキを抜いている暇なんてなかったですよ」
「カルキ抜きの薬も売っていますよ。それだとすぐカルキが抜けます」

 などと、いろいろ教えてくれました。ついでにその場にいた別の看護師さんと、事務のおじさんにも聞いたら、みんな「カルキ抜き」も「ブクブク」も当然の知識として持っていて、自分のあまりの常識のなさ(?)に愕然としました。

 とりあえずホームセンターに行って、ブクブクと水槽のセット、カルキ抜きの薬、金魚のえさを買わねば!という結論に至りました。

著者プロフィール

織田うさこ(皮膚科医・内科医)●市中病院での初期研修修了後、皮膚科医として勤務していたが、必要に迫られて、内科も勉強しながら従事している。家庭医として地域医療に貢献。何事にも必死になりすぎるタイプ。

連載の紹介

うさコメント!
2007年、小西真奈美さん主演で放映されたドラマ「きらきら研修医」のモデルとなった織田うさこ氏が、身の回りの医師について、患者との関わりについて、医療現場で起こるさまざまな出来事について、独自の視点で語ります。

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