去年の終わり頃、スマートフォンを機種変更しました。LINEの引き継ぎ作業をしていると、友達リストも更新され、目新しい名前を見つけました。以前、同じ病院で働いていた同僚でした。相手のほうにも私の名前が挙がったらしく、彼女からすぐにメッセージが。
「久しぶりー! 急に名前見つけてテンション上がった!今どうしてるの?!」
昔と同じままの口調が懐かしく、お互いに近況を報告しました。彼女は2人の小さな子供を抱えながらも、外科医として活躍しているようで、今は科の部長をしているとのこと。
「すごいねー、部長だなんて! 偉いね!」
私がそう送ると、「田舎の病院だから人がいないだけ」と謙遜していましたが、子供を祖父母に預け、当直もこなし、バリバリ働いているようです。昔から優秀な人だったけど、相変わらずスゴイ。「また近いうちに会えたらいいね」と送って、やりとりは終わりました。
…数日後。診療所宛の郵便物の中にあった、某病院の広報誌をめくっていると、ドクター紹介のページがあり、見覚えのある同僚の顔を見つけました。“麻酔・救急担当の〇〇医師”という紹介文とともに、昔と変わらない笑顔。ドクターカーに乗って、あちこち駆けつけては、救命に精を出しているようです。これまたすごい。記事を読み、懐かしい気持ちになりながらも、頑張っている彼女にエールを送りたい気持ちになりました。
次に学会誌を手に取ってめくっていると、またも、懐かしい名前を見つけました。医学部の同級生です。彼は海外留学したと聞いていたけど、もう日本に帰ってきたのかな。さっと見ただけでは私には理解できないような小難しい内容の論文を発表しているようでした。
何だか…、みんな、スゴイんだなぁ…。
みんな、それぞれの場所で、頑張っているみたい。日本の医療に貢献し、たくさんの命を救っているのでしょう。かたや私なんて、小さな診療所で毎日、明けても暮れても、おじいちゃんおばあちゃんを診る日々。お年寄りばかりで、命を救うというよりは、どちらかというと看取ることの方が多いくらいです。めざましい経歴があるわけでもないし。みんなに比べると、まったくもって地味です。
友がみな われよりえらく見ゆる日よ 花を買いきて妻としたしむ
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著者プロフィール
織田うさこ(皮膚科医・内科医)●市中病院での初期研修修了後、皮膚科医として勤務していたが、必要に迫られて、内科も勉強しながら従事している。家庭医として地域医療に貢献。何事にも必死になりすぎるタイプ。

連載の紹介
うさコメント!
2007年、小西真奈美さん主演で放映されたドラマ「きらきら研修医」のモデルとなった織田うさこ氏が、身の回りの医師について、患者との関わりについて、医療現場で起こるさまざまな出来事について、独自の視点で語ります。
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