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“豪快”な外科医の内面は

2014/02/10

 同期の男性外科医の口癖は、「俺は運動神経がいいから、オペもうまい」。大柄でガッチリしている体育会系で、いかにも外科医らしい感じです。そんな彼に、マッチョ好きの後輩女医が興味を持ち、3人で彼女が通うボクササイズジムの体験会に行くことになりました。

 鏡張りのスタジオで、音楽に合わせて格闘技の動作を行うのですが、彼女は慣れているだけあってスムーズ。一方、運動神経がいいと話していた彼の動きはぎこちない。

 「危なっかしいなぁ」と思いながら見ていると、次の瞬間、彼の猛烈な右アッパーが自分自身の顎をモロに直撃。眼鏡は放物線を描いて、前方へ…。パリーン!

 前の鏡に激突し、粉々に割れる音に、皆が思わず動きを止め、インストラクターも目がまん丸。その後も彼はこわばった顔でエクササイズを続けていましたが、私たちは笑いをこらえるのに必死でした。

 帰り際、「絶対このことは他言するな」と何度も私たちに言いました。が、彼と別れた直後、彼女は、「眼鏡事件」と題したメールを友人たちに送信。恋心は眼鏡同様、一瞬で砕けたようでした。

 翌日以降、噂はあっという間に広まり、患者さんまでが知る始末。誰もが彼の顔を見てはクスクス笑っていました。

 笑いのネタぐらいのことだと思っていましたが、予想外に、本人は落ち込んでいました。2週間くらい経ってもまだ暗い顔をしているので、悪いことをしたなあと反省しつつ、慰めるつもりで「気にするほどのことでもないじゃない」と声を掛けました。すると、「あの一件のせいで、俺は常にバカにされるようになった!」と半泣きで怒鳴られました。豪快な外見とは裏腹の意外な一面でした。

著者プロフィール

織田うさこ(皮膚科医・内科医)●市中病院での初期研修修了後、皮膚科医として勤務していたが、必要に迫られて、内科も勉強しながら従事している。家庭医として地域医療に貢献。何事にも必死になりすぎるタイプ。

連載の紹介

うさコメント!
2007年、小西真奈美さん主演で放映されたドラマ「きらきら研修医」のモデルとなった織田うさこ氏が、身の回りの医師について、患者との関わりについて、医療現場で起こるさまざまな出来事について、独自の視点で語ります。

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