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チェックリスト診断の功罪

2015/12/09

 3年間にわたり、ほぼ毎週コラムを執筆させてもらったせのびぃですが、2015年末を持ちまして一度お休みをいただくことになりました。残る4回は、精神科をめぐる現状について解説しつつ、今までのコラムの振り返りをして、今後のせのびぃの目標を述べたいと思います。

病気は「ある」か「ない」かで決まる?
 精神科には、主要な診断基準(分類基準)が2つあります。1つはWHOが出しているICD-10(もうすぐ11が出る予定)で、もう1つはアメリカ精神医学会(APA)が出しているDSM-5です。過去にも簡単に解説しました(社会適応とストレングスモデル)。

 これらは、それぞれの「病気」について基準が並んでおり、n個満たすと晴れて(?)その「病気」として認定される、ということで、「チェックリスト診断」とも揶揄されています。特に精神科の場合は、病名と治療が1対1対応しないので、病名だけ決めてもしょうがない。とはいえ、臨床上参考にしている医師が多いのも現実です。

 さて、ここで当然、次のような疑問が出てきます。病気は「ある」か「ない」しかないのか、どちらともいえないグレーゾーンはないのか、ということです。

 糖尿病であれば、明確なカットオフが決まっているので、定義上の「ある」か「ない」かの判断は簡単です。それでもそのカットオフをまたいだ瞬間、いきなり糖尿病を発症する、というわけではないですよね。

 特に精神科の場合は、「診断基準は満たしきってないけど、縦断的に病歴を考えれば、明らかに病名をつけたほうがよいだろう」という時点で介入することに大きな価値があると思います。重症化前に対処、ということですね。

 一方、「チェックリストは容易に満たすけど、明らかにその病気じゃないよね」ということも多いです。最近は、某製薬会社のプロモーションで、ADHDの啓発活動が進んでいます。啓発が進むことは悪くないのですが、統合失調症でもうつ病でもそのチェックリストを満たすことは多いので、チェックリストだけ見て薬物療法に踏み切るのは考えものだと思います。実際、せのびぃは、チェックリスト診断で薬が処方され、精神症状が増悪して転医してきた患者さんを受け持っています…。

著者プロフィール

毎日せのびぃ●市中病院での初期研修後、出身大学病院を経て、再度初期研修病院に戻った精神科医の卵。外見や語り口は穏やかで気さくな好青年。だが、胸の内には数々の野望が渦巻いている。今はそれらを封印し、高みを目指して修行に励む日々。

連載の紹介

日々是たぶん好日ナリ
毎日せのびぃ”が臨床の狭間で繰り出すつぶやきログ。生活の大部分を占める医療ネタのほか、将来のこと、趣味のこと、世間話など、フリーハンドで書いていきます。

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