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日本精神神経学会(5)
最初の一言の重みを意識する

2015/07/08

 日本精神神経学会の記録の最終回です。学会の演題は、もちろん最新の治療やエビデンスの話が多いのですが、せのびぃとしても読者としても、あまり興味をそそらないと思うので、そういう話は日経メディカルの記者に任せて(笑)、今回もナラティブな話をさせてもらおうと思います。

 前回まで、北山修先生の講演から、「Scientificな説得力はなくても、語りとしての説得力があって普遍性がある」、患者が持ち込んだ劇の「台本」を読む行為としての面接について書いてきました。治療者自身が劇の登場人物なので、治療を左右する変数になるということを書いてきました。

 エキスパートはみんな同じことを言うのかもしれませんが、別のシンポジウムでも同様のことをおっしゃっている先生がいました。児童精神科医の松田文雄先生です。

主役は子どもであることを明確にする
 精神療法は、「表現的で、支持的で、洞察的な訓練療法」というような定義があるようですが、これを松田先生が子どもバージョンに翻訳すると、「子どもの心の声を傾聴し、その内容をしっかりと受け止め支え、理由を共に探し、新しい自分探しに付き合う」営みだといいます。

 力動精神医学という考えがあります。これは、「人間の精神現象を、生物・心理・社会的な諸力による因果関係の結果として捉える」ということです。子どもの場合は、薬物療法の前に非薬物療法が特に優先されるため、初回面接は特に重要で、治療成否のかなりの部分が第一印象で決まってしまうとのことです。

 松田先生が大事にしていらっしゃることを箇条書きにすると、
 ・会う前の先入観(紹介状など)と第一印象との比較
 ・誰と受診するか、待合室での様子と入室時の順番
 ・最初の発言
 などだそうです。

 診察室に、誰と、どの順番で入ってくるかを観察するだけで、かなり家族関係が推定できます。親が口火を切ろうとしても、まずは子ども(本人)に対して、「こんにちは、どうぞお掛けください」と、必ず、子どもの目を見て、主役は子どもであると、言語的・非言語的に伝えます。それから自己紹介をし、本人と時間を使うそうです(このあたりの重要性は、せのびぃも普段の外来診療で常々感じます)。

 その後、「じゃあ、お母さん(お父さん)に聞いてもいいですか」と、本人に許可を取ってから、「お母さん(お父さん)の心配されていることは何ですか?」と尋ねるそうです。

 ここで「お母さん(お父さん)の困っていることは何ですか?」と尋ねると、子どもはどうしても、「見捨てられた」「自分が悪者である」というようなニュアンスを感じてしまうからだそうで、1つの言葉の選び方についても慎重になる重要性に気付かされました。

著者プロフィール

毎日せのびぃ●市中病院での初期研修後、出身大学病院を経て、再度初期研修病院に戻った精神科医の卵。外見や語り口は穏やかで気さくな好青年。だが、胸の内には数々の野望が渦巻いている。今はそれらを封印し、高みを目指して修行に励む日々。

連載の紹介

日々是たぶん好日ナリ
毎日せのびぃ”が臨床の狭間で繰り出すつぶやきログ。生活の大部分を占める医療ネタのほか、将来のこと、趣味のこと、世間話など、フリーハンドで書いていきます。

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