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マーケティングの世界もEBM!?

2013/10/11
内藤祥

 医者の仕事の半分は本や文献を読むことだ、と言っても過言ではない。必然的に、本の入手ルートである「Amazon.co.jp」は、医者がよく使うWebサイトの代表となっているだろう。私が医学生の頃は、専門書は大学付属の古めかしい本屋で注文し、入荷するころには忘れているというような状況だった。しかし今は、ほとんどの本がクリック1つで簡単に入手できる。私が日本の最果てに近い西表島の診療所で働いていたときでさえ、2日後には家に本が届いてしまうのだからすごいものだ。

 それにしてもAmazonは使いやすい。書籍を扱う通販サイトは他にも多々あるが、やっぱりAmazonに戻ってきてしまう。そういえば、Amazonのページは行く度にデザインや構成などが変わっているような気がしないだろうか。実は企業のWebサイトは、私たちの知らないところで、日々激しく進化し続けているのである。

マーケティングは「非科学的」な学問か
 こういったeコマースのインターフェースや、広告を含めた「マーケティング」の世界は、正直言って私がビジネススクールで最も取っ付きにくかった領域である。これは、もともと医療行為そのものには社会福祉的な側面があり、販促や宣伝広告などの活動をすること自体が法律で制限されているという背景も関係しているだろう。

 加えてマーケティングの方法論には正解が多数ある。これは、言い換えれば、理論的に導かれる1つの解答がないということだ。その意味では非常に「非科学的」なのである。「非科学的」という言葉の意味は、商品やサービスを売るためのやり方には、分析手法はあるものの決まった原理原則というものはないというアートの部分もあり、ときに思いがけない突飛なアイデアが爆発的にヒットすることもある。事実世の中には、理由はよく分からないがすごく売れている物がたくさんある。

 しかしこれを医療者という「科学一筋の堅物」(と世の中からは見られている)の視点から見ると、なぜこのような「根拠のないこと」がTVやWebなど公然の場で堂々と宣伝されているか、不思議で仕方がないのである。実際、最近は医者の友人と飲みに行くと、こういった話題でよく盛り上がる。

 例えば、3カ月で何kg痩せたというようなダイエットサプリに対しては、「ダブルブラインドではないデータで、プラセボ効果が考慮されていない」とか「ホーソン効果(監視されていることで結果が良くなること)にすぎない」などが酒の席で本気で議論される。

 あるいは、コンドロイチンのサプリが膝に効くかと言われれば、「コンドロイチンはアミノ酸と糖鎖の化合物なので、飲んでも胃ですべて分解されてしまう。よって膝に届くわけがない(髪の毛の薄い人が、髪の毛をそのまま食べても毛が生えてくるわけではないのと一緒)」などと、科学的な事実をあげつらうのだ。

著者プロフィール

内藤 祥(慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程)●ないとう しょう氏1978年 神奈川県生まれ。2005年北里大卒。沖縄県立中部病院で4年間の研修の後、2009年より2012年まで西表西部診療所。2012年より現職。西表島勤務中には「離島医師たちのゆいまーる日記」を執筆していた。

連載の紹介

「目指せMBA!」
離島の「一人医師」として従事してきた内藤氏は「地域医療を守るためにも経営学的な視点が必要」と痛感したことから、ビジネススクールに進学。臨床医が、一般企業の会社員と机を並べながらそこで感じたことをつづっていきます。

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