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第14回
日本の医療の未来を考える その2

2020/05/29
田中 和豊

 今回は本連載の最後に当たって、日本の医療環境について考えてみたい。これまで筆者の研修当時を振り返り、20年前から最近までのアメリカの状況を紹介してきたが、日本の医療は20年前のアメリカ医療に今でも追いついていない点がある。医師の労働は、交代勤務のシフトを組んで完全に申し送りできない病院が多いし、ナイト・フロートという夜勤専属のシフトも一部の医療機関が試験的に試みているにすぎない。アテンディング・ドクター(指導医)が主治医となってチーム医療を行う制度も普及していない。医師の過重労働が起こりやすい環境は、なかなか改善されない。

 アメリカで医師の労働時間が軽減されて、かつ医師にしかできない業務に集中できる環境にあるもう1つの理由は、PA(フィジシャンアシスタント)の存在である。このPAとは特別な医師業務の教育を受けて、軽症患者を医師のように診療することが可能な職種である。実際筆者がアメリカで研修していた約20年前にも、老人病棟はすでにほとんどがこのPAで運営されていた。

 現在、救急室で夜間に入院適応がないが帰宅もさせられない患者は、observational unitという経過観察ユニットで翌朝まで経過観察されている。このobservational unitは、現在ほとんどがこのPAと内科の指導医で運営されているそうである。observational unitの多くの患者は、急変することなく翌日帰宅できる。もしも帰宅できない場合には、正式に入院となり病棟チームに引き継がれることになる。このように患者の安全・安心のためには有用だが、医師にとってはほぼ雑務に分類されるような業務をPAがこなしてくれる。こうした業務分担を行うことによって、インターンも含めて医師は医師にしかできないより重症な患者のマネジメントに集中できるのである。

著者プロフィール

田中和豊(福岡県済生会福岡総合病院 総合診療部主任部長・臨床教育部部長)●たなか かずとよ氏。慶應大理工学部を卒業後、医師を目指す。94年筑波大医学専門学群卒業。横須賀米海軍病院、聖路加国際病院、アルバートアインシュタイン医科大、ベス・イスラエル病院などを経て、2012年より現職。

連載の紹介

アメリカ臨床留学 今昔物語
Cadetto.jpの好評連載「医学書ソムリエ」でおなじみの田中和豊氏が、若手医師の頃に留学していたニューヨークの病院を19年ぶりに再訪しました。これを機に当時の留学事情やレジデンシープログラムを振り返りながら、米国の最近の医療事情も紹介します。

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