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第13回
日本の医療の未来を考える その1

2020/05/20
田中 和豊

 前回まで、約20年前の筆者の内科レジデント時代から、最近に至るまでのアメリカのレジデンシーの変化と動向について述べた。アメリカ医療や医学教育について、これほど長く述べた最大の理由は、他山の石として参考になる点が多いと感じたからに他ならない。

 日本では、2004年度に新医師臨床研修制度が始まり、2018年度に新専門医制度が施行された。現在はサブスペシャルティ領域の研修が議論されている。また、総合診療専門医の創設に伴い、かかりつけ医制度や病院総合医についても議論されている。一方、医療保険分野では2005年頃からDPC制度が普及し、人口減少時代への対応策に向けて医療機関を誘導するために、様々な診療報酬点数の改定が行われている。

 そして、それとは別に「働き方改革」で医師の労働時間が削減されて、1人主治医制から複数主治医制への変更も議論されている。業務分担やタスクシフティングの一環として、看護師特定行為研修という研修を受けた看護師が、今まで医師しか実施できなかった医療行為の一部(特定行為)を行うことも2016年度より可能となった。労働条件を考える上では、医師の専門科や地域による偏在という問題への取り組みも欠かせない。このように多方面から同時に劇的に変容する現在の日本の医療環境は、これから一体どうなるのであろうか?

 1つだけ言えることは、アメリカの医療現場で起こったことが、日本でも起こる可能性が高いということである。マンハッタンで多くの病院が閉院したり縮小したように、文末の参考文献に示した『週刊東洋経済』の記事によると、今後日本の病院数は約半分まで減少するのではないかと論じられている。つまり、日本の必要病院数は現在の約半分で足りるはずだというのである。筆者が約20年ぶりにNYを訪問して見てきた廃虚のような病棟や外来に改築された病棟、そして建物が売りに出される病院、このような光景が数十年後の日本で頻繁に見られるかもしれない。

著者プロフィール

田中和豊(福岡県済生会福岡総合病院 総合診療部主任部長・臨床教育部部長)●たなか かずとよ氏。慶應大理工学部を卒業後、医師を目指す。94年筑波大医学専門学群卒業。横須賀米海軍病院、聖路加国際病院、アルバートアインシュタイン医科大、ベス・イスラエル病院などを経て、2012年より現職。

連載の紹介

アメリカ臨床留学 今昔物語
Cadetto.jpの好評連載「医学書ソムリエ」でおなじみの田中和豊氏が、若手医師の頃に留学していたニューヨークの病院を19年ぶりに再訪しました。これを機に当時の留学事情やレジデンシープログラムを振り返りながら、米国の最近の医療事情も紹介します。

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