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第10回
20年ぶりに留学先を再訪、病棟の風景は……

2020/03/23
田中 和豊

 前回は、約20年前に筆者が経験したアメリカでのレジデント生活を紹介した。今回は20年ぶりに再訪したマウント・サイナイ・ベス・イスラエル病院(以下MSBI、当時の名称はベス・イスラエル・メディカル・センター)と、現在MSBIで研修されているセカイイチ・クラブの日本人現役レジデントのご厚意で、当時筆者が住んでいたアパートも見学することができたのでご紹介する。

 訪問したのは2019年8月6日のことだった。最初に筆者が当時住んでいたアパートを見学させていただいた。このアパートは古くて暗いので、現在ではレジデントからは通称”cave”(洞窟)と呼ばれているそうである。筆者が留学した当時でも、既に築100年くらい経過していると聞いていたが、いまだに建物は現存していて、実際に日本人レジデントも住んでいた。建物の内部も見学させていただいたが、筆者が住んでいた約20年前とほとんど変わっていないような印象を受けた。

 間取りは日本で言えば10畳くらいのワンルームの横に小さい冷蔵庫付きのキッチンとそれとは別にシャワールームと一緒のトイレだけの作りである(studioと呼ばれる)。ベランダが一応ついていたが、ゴミ置き場くらいにしか使えない。当時の冷房は窓に設置されていたが、スイッチをONにしてもほとんど効かなかったし、暖房は全館暖房で各部屋では調節できなかった。暖房使用時に室温が上がり過ぎたら、窓を開けて換気して調節するしかなかった。アメリカでは各部屋に洗濯機を置く習慣はなく、洗濯は地下1階にあるコインランドリーで行った。こんな古ぼけたアパートのワンルームの1室であるが、これでもマンハッタンという利便のよい立地にあるアパートであるので現在では20年前の2倍程の15~18万円の高値で貸し出されているらしい。筆者の頃は、ほとんどすべてのレジデントは病院付近のアパートに居住していたが、このようなマンハッタン内のアパートの家賃の高騰に伴って、現在ではMSBIのレジデントの宿舎は病院から離れた場所に移行しているとのことであった。

 改めてアメリカの建築を見直すと、病院も含めて築100年ほどの建築物がざらにある。通常日本ではマンションなどの鉄筋の建築は、10~15年で外装工事、30年以内に配管工事などが必要と言われている。実際に日本で築100年以上のアパートや病院がほとんど存在しないことを考えると、日本とアメリカの鉄筋建築の何が根本的に異なるのか疑問に思った。

 アパートの近くに新しくマクドナルドなどができていて、さすがに近所の風景は20年で変わったと思ったのだが、よく見ると入居しているテナントが変わっただけで、建物自体は古いままであった。この24th St.にあるアパートから1st Ave.をたどって、当時筆者が病院に通勤していた道を歩いてみた。当時とほとんど景色は変わっていなかった。

著者プロフィール

田中和豊(福岡県済生会福岡総合病院 総合診療部主任部長・臨床教育部部長)●たなか かずとよ氏。慶應大理工学部を卒業後、医師を目指す。94年筑波大医学専門学群卒業。横須賀米海軍病院、聖路加国際病院、アルバートアインシュタイン医科大、ベス・イスラエル病院などを経て、2012年より現職。

連載の紹介

アメリカ臨床留学 今昔物語
Cadetto.jpの好評連載「医学書ソムリエ」でおなじみの田中和豊氏が、若手医師の頃に留学していたニューヨークの病院を19年ぶりに再訪しました。これを機に当時の留学事情やレジデンシープログラムを振り返りながら、米国の最近の医療事情も紹介します。

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