Cadetto.jpのロゴ画像

第6回
昔も今も、臨床留学の手続きは面倒

2020/01/10
田中 和豊

1995年4月7日 横須賀米海軍病院インターン終了式にて

 前回は、アメリカ臨床留学の準備として臨床実習について取り上げた。今回は日本の初期研修医に当たるレジデンシーとして、臨床に従事するための手順について紹介する。

 まず米国の医師国家試験に該当するUSMLEのStep1とStep2に合格する必要がある。その上でECFMGの認定を受ける必要がある。ECFMGはEducational Commission For Foreign Medical Graduatesの略で、米国で臨床に従事したい外国人医師の適性を証明する非営利団体だ。筆者が留学した当時は、ECFMG English Testに合格すれば、ECFMG Certificateが授与された。しかし、最近ではUSMLEのStep2に、実際に模擬患者を診察してカルテを記載するCS(Clinical Skill)という試験も加わっている。Step1の基礎医学とStep2の臨床知識の試験は日本でも受験できるが、Step2のCSはアメリカで受験する必要があるので、当時よりも受験のハードルは高くなった。

 このECFMG Certificateを取得した後に、初めてレジデンシーの就職活動を行うのである。アメリカのレジデンシーの就職活動はマッチングで行われるが、外国人である日本人が希望通りの病院に採用してもらうことはほとんど不可能と予想された。採用されるのは、へき地などの条件が悪い病院と相場が決まっていた。ECFMG Certificateを取得するだけでも大変なのに、これ以上余計な苦労はしたくなかったので、筆者はアメリカのレジデンシーへ日本人を紹介するプログラムを利用できないかと考えた。調べてみると、第2回に紹介したNプログラムと、野口英世の業績を記念して日米医学交流の促進を目的にした財団法人の野口医学研究所が見つかった。野口医学研究所は比較的短期間の留学プログラムが中心だったので、3年間の留学プログラムがあるNプログラムに応募することにした。

 このNプログラムの選考試験も大変であった。日本の医師国家試験に合格していることと、ECFMG Certificateを取得していることのほかに、留学希望者にはTOEFLの受験を推奨していたから、改めてTOEFLを受けることにした。履歴書などの書類の準備や、面接試験なども必要だった。筆者は運良くNプログラムの選考に通ったが、面倒な手続きはそこで終わりではなかった。アメリカ渡航のためのワクチン接種と診断書作成、観光旅行ではないから渡航ビザ申請と長期滞在の準備もしなければならない。そして、実際にアメリカへ渡航してからも、Social Security Number(社会保障番号)の発行、銀行口座開設、自分が住むアパートの契約、アパートで使用する家具の購入、電話とテレビの契約など、必要な作業は目白押しであった。

著者プロフィール

田中和豊(福岡県済生会福岡総合病院 総合診療部主任部長・臨床教育部部長)●たなか かずとよ氏。慶應大理工学部を卒業後、医師を目指す。94年筑波大医学専門学群卒業。横須賀米海軍病院、聖路加国際病院、アルバートアインシュタイン医科大、ベス・イスラエル病院などを経て、2012年より現職。

連載の紹介

アメリカ臨床留学 今昔物語
Cadetto.jpの好評連載「医学書ソムリエ」でおなじみの田中和豊氏が、若手医師の頃に留学していたニューヨークの病院を19年ぶりに再訪しました。これを機に当時の留学事情やレジデンシープログラムを振り返りながら、米国の最近の医療事情も紹介します。

この連載のバックナンバー

この記事を読んでいる人におすすめ