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ボストンには働く女性を励ます言葉があふれている

2010/03/16
吉田穂波

 アメリカの女性たちはどのように仕事と家庭とを両立しているのでしょうか。それが知りたくて、ボストンで周囲の女性たちをひそかに観察し続けています。

 留学を決めたとき、産婦人科医としてのクリニカル・クエスチョンのほかに自分で設定した研究テーマがいくつかありました。その一つが女性医師のワークライフバランスが外国でどうなっているか、ということでした。

 私自身、日本で病院に勤務していた時は、ファミリーサポートサービスや生協の助け合いサービス、派遣ヘルパーさんなどいろいろなところにお願いして、週に4日は人に来てもらい、家事や送り迎えをしてもらっていました。個人で頼めるシッターさんを3人ほど確保し、保育園からお迎えコールが来た、体調不良で登園できなくなった、など急に助けが必要になったときも無理を聞いてもらっていました。また、生協の宅配を利用して買い物に行かずに済むようにしていました。それでも毎日が自転車操業で、あちらにもこちらにも頭を下げて回るということを繰り返していました。

 負けず嫌いの私は、何としても仕事で周囲の人と同じくらい頑張りたいと思っていたのです。でもその一方で、こんなに子供たちと一緒にいる時間が短くていいのだろうかと、いつも罪悪感を抱いていました。

 そんな私が、つくづくボストンに来てよかったと思うことの一つは、学生になってから子供といる時間を自分で調整できるようになったことです。もちろん、自分の睡眠時間を割かなければ勉強時間を確保できないなど、臨床をしていたときよりも忙しく感じることはありますが、確実に週末は子供たちと一日中向き合う生活です。そして、もう一つは、日本ではあまり親しく話す機会がなかったほかの科のドクターと家族ぐるみの付き合いができるようになり、女性医師が働き続けるうえで貴重なアドバイスをいくつかいただけたことです。

 アイオワ州に留学している小児精神科医の方は、「家事と育児が母親の愛情表現なのではない」と言いきり、「精神的に安定した母親と週に1日だけ一緒にいる方が、いらいらした母親と24時間365日一緒にいるよりも、子供の精神衛生上ずっと良い」とも言ってくれました。

 もっと早くこの言葉を聞きたかった、と思いました。そして私だけでなく、育児に忙殺され自分自身のことを考える余裕もないという子育て期の母親たちや、「家族に尽くし続けて、気づいたら年をとっていた」とふさぎ込んで更年期外来を訪れる患者様方にも、この言葉を聞かせてあげられたらと思いました。

著者プロフィール

吉田穂波(ハーバード公衆衛生大学院リサーチフェロー)●よしだ ほなみ氏。1998年三重大卒後、聖路加国際病院産婦人科レジデント。01年名古屋大学大学院。ドイツ、英国、日本での医療機関勤務などを経て、08年ハーバード公衆衛生大学院。10年より現職。

連載の紹介

吉田穂波の「子育てしながらハーバード留学!」
米国ハーバード公衆衛生大学院で疫学の研究に従事する吉田穂波氏が、日米を往き来しながらの研究生活、子育て、臨床現場への思いなどを、女性医師として、産婦人科医として、4人の子の母親として、肌で感じたままにつづります。

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