日経メディカルのロゴ画像

“英語アレルギー”の私が「今、英語で発信したいこと」

2010/01/14

HSPHのセミナーで諸外国の学生たちがプレゼンを聞いている様子。これだけの学生を前でプレゼンするのは正直かなり緊張します。

 私は今まで、恥ずかしいくらい英語の原著論文を読んできませんでした。大学生時代に『The Cell』を読むのがいいと親に勧められ、高価な本を買ってもらったにもかかわらず、結局、日本語の翻訳本を斜め読みして終わってしまいました。

 研修医時代、アメリカ式医学教育に憧れて聖路加国際病院での研修医生活を始めたにもかかわらず、朝一番のJournal Club(抄読会)では論文を前にうたた寝。いろいろな症例にぶつかるたびに、セシル内科学を読むように、とか、Williams産婦人科学を読むように、と、先輩レジデントから言われ英文の教科書を開くのですが、すぐ睡魔に襲われ…。結局、論文や成書から学術的な知識を得るよりも、経験と上級医師の背中を見て技術を盗むやり方で臨床経験を培ってきました。

 大学院生時代、医局の抄読会では自分の当番のときだけ必死で翻訳し、終わるとホッとしていたものです。基礎研究の教室では、たくさんの先生方が論文を出しているのを見て、多少、英語で論文を発表することに興味を持ち、多くの方に指導していただきながら学位論文を出しました。すると、この論文に海外からのreprint(掲載された論文の別刷り)の請求が多く、とてもうれしかったことを覚えています。その情報を欲しがっている世界中の人とつながったような気がして、英文で論文を出すことの意義が分かったような気がしました。

 その後、ドイツ、イギリスで臨床経験をして、いかに日本が遠い国かということをひしひしと感じました。日本にいるときは自分たちの国が先進国だと思い込んでおり、経済面、技術面など欧米との距離を感じませんでしたが、やはり実質的な距離と、言葉の隔たりはとても大きいのです。

 例えば、ドイツの上司が、その当時はまだ珍しい最先端の腹腔鏡手技を、フランスの知人と電話をしていたときに教えてもらったと話しています。ヨーロッパのどこかの大学で同級生だった医師同士は、国境を越えてずっと情報を共有しています。ヨーロッパの中では日本の地方会のような学会が頻繁に開かれ、国と国との間,人と人との間で情報が簡単に行き来しているのです。

 また、ドイツ語で書かれているヘッセン州(フランクフルトのある州)医師会雑誌を読むと、アメリカでの共同研究者との研究結果がさりげなく掲載されています。このような口コミの内輪情報が発表され、翻訳され、日本に届くのはいつのことなのだろうと考えてしまいました。私のように、原著論文を読むことに抵抗がある日本人医師は、それだけ情報が遅れてしまう。世界の動きに遅れるだけでなく、自分の知識が止まってしまうということを痛感したのです。

著者プロフィール

吉田穂波(ハーバード公衆衛生大学院リサーチフェロー)●よしだ ほなみ氏。1998年三重大卒後、聖路加国際病院産婦人科レジデント。01年名古屋大学大学院。ドイツ、英国、日本での医療機関勤務などを経て、08年ハーバード公衆衛生大学院。10年より現職。

連載の紹介

吉田穂波の「子育てしながらハーバード留学!」
米国ハーバード公衆衛生大学院で疫学の研究に従事する吉田穂波氏が、日米を往き来しながらの研究生活、子育て、臨床現場への思いなどを、女性医師として、産婦人科医として、4人の子の母親として、肌で感じたままにつづります。

この記事を読んでいる人におすすめ