
4月28日の豚インフルエンザのランチョンセミナーの様子。
夕方には子供を迎えに行かなければいけない私にとってはうれしいことに、HSPH(ハーバード公衆衛生大学院)では毎日のようにお昼の時間を利用してセミナーが開かれています。それも、医学、疫学、グローバル・ヘルスのみならず、給料交渉術、リーダーシップ、子供のいじめ、ストレス発散法などテーマが多岐にわたるから面白い。会場はHSPHやHMS(ハーバード大医学部)の講義室が使われることが大半。ピザやドリンクが無料で提供されると会場が満員になるのは、さすが倹約家のアメリカ人といったところでしょうか。
HSPHのDeanであるDr. Julio Frenkが元メキシコのMinister of Health for Mexico (2000-2006)だったこともあって、ここ数日HSPHとMexican government は緊密に連絡を取り合って対策を立てています。Dr. FrenkはHSPH学生との対話の場を設け、メキシコ政府の対応について、なぜ死者が出たのかについて、栄養問題や医療機関での対応など自分の見解を披露してくれました。今回の感染状況が警戒フェーズ5(2カ国以上、あるいはWHO加盟国1国でのcommunity level outbreak)に上がったのも、感染がアメリカに近いメキシコから始まったため、アメリカへの感染拡大を抑えたいというアメリカ側の思惑が影響しているように思えます。
さて、週末からのSwine Flu(豚インフルエンザ)拡大を受け、昨日(4月28日)はインフルエンザ大流行の歴史と今後について、長らくWHO(世界保健機関)、CDC(疾病対策センター)で働いてきた講師によるランチョンセミナーが開かれました。
そもそも、今回問題となっているインフルエンザA(H1N1)は、その昔1918年に悪名高きスペイン風邪として未曽有の被害をもたらしたインフルエンザと同じ型です。講師であるSimonsen博士は1918年の流行について、まず若年成人から始まり、その後コミュニティに浸透していく様子や、一度流行が終息したと思われても第二、第三の波が起こり、死亡者数が増加していく様子を、疫学的データを用い多くの研究論文を詳細にレビューしながら解説しました。
高齢者には過去の感染による免疫ができているためか、パンデミック当初はあまり感染しませんが、流行の拡大とともに罹患率が上がっていくようです。飛沫感染対策や学校閉鎖、隔離などの方策をシミュレーションしながら、どうすれば今後の流行を緩和できるのか、示唆的な情報が盛りだくさんでした。