引き続き、ハーバード公衆衛生大学院(HSPH)の教育方法について紹介したい。
試験とレポート
自分が選択した科目はレポートの提出と、コンピューター以外は何でも(教科書や講義で配布された資料など)持ち込み可という試験が多かった。Take Home Examという、自宅に試験問題を持ち帰って、期限までに提出するというものもあった。
レポート提出の期限は講義が始まる以前から設定されており、内容についての説明もシラバスに詳しく書かれている。多くのレポートが「ダブルスペースで5~10枚」となっており、電子メールに添付してTeaching Assistant(TA、後述)や教授に送信する。
過去問も配布され、勉強すべき内容についてはある程度把握できるものの、試験勉強はやはり大変だった。当然のことながら、すべてが英語という勉強は自分にとってつらいものがあった。まず、試験の問題文の意味から分からないことさえあった。
「このようなことを書けばいいのだろう」と考えて書き始めはするのだが、「どう書いたらいいのか?」「論理的な整合性は取れているのか?」「文法は大丈夫か?」と不安は尽きない。さらには年齢相応の記憶力の低下が加わり、持ち帰りのものでも予想以上に時間がかかった。講義室での記述式の試験では、問題を予想して答を準備し、記憶して臨んだこともあった。
レポートは比較的余裕を持って取り組んだせいか、自分にとってはそれほど負担にはならなかった。とはいえ、“剽窃”には十分に注意した。アメリカでは剽窃は犯罪行為とみなされる。レポート作成時に文献を引用する時は必ず引用元を、インターネットからの情報は必ずURLを記載しなければならない。URLについては、アクセスした時間も場合によっては記載するように指導された。データや情報が経時的にアップデートされるサイトがあるためだ。
講義をサポートするTAシステム
こちらに来てとても良いシステムと感じたのが、Teaching Assistant(TA)制度である。TAとなるのは、ドクターコースやPhDコースを選択している学生。大体、1科目に2人のTAが配属される。TAは希望者から選ばれ、1科目について1000ドルほどの報酬が得られる。
TAの仕事は講義のシラバスの作成の手伝い、配布資料のプリントアウト、学生からの質問への回答、学生の理解を深めるための復習セミナー(TAセッションと呼ばれる)の開催、試験の採点などである。質問は口頭もメールもあり、科目によってはかなり大変なようだ。
ほとんどのTAは講義の理解を深めるためにいろいろと時間を割いて教えてくれて、質問にも的確に答えてくれた。もっとも、多少は当たり外れがあり、中には質問に全く答えてくれないTAもいたが。
基本的にはとても良いシステムなので、日本の大学院などでも導入と普及が進んで欲しいシステムの一つだ。
新規に会員登録する
会員登録すると、記事全文がお読みいただけるようになるほか、ポイントプログラムにもご参加いただけます。
著者プロフィール
内山 伸(ハーバード公衆衛生大学院生)●うちやま のぼる氏。1999年佐賀医大(現佐賀大学)卒後、1999〜2001年聖路加国際病院内科レジデント、2001年同チーフレジデント、2002年同病院呼吸器内科。2007年7月留学。

連載の紹介
内山 伸の「ハーバード留学日記」
2007年7月から1年間、米国ハーバード公衆衛生大学院(Harvard School of Public Health)に留学した内山氏。日々の授業の内容や米国の医療事情、ボストンでの生活を紹介します。
この連載のバックナンバー
-
2008/08/29
-
2008/08/19
-
2008/08/12
-
2008/07/25
-
2008/07/23