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ハーバードの教育方法(その1)
Summer sessionで働きながら修士号

2008/07/07

 1年間、ハーバード公衆衛生大学院(HSPH)で学んできたわけだが、やはりカルチャーショックだったのは、教育システムの違いだった。今回から数回にわたり、ハーバードの教育方法について紹介したい。日本でも公衆衛生大学院が次々とできているようであるが、何かしらの役に立てれば幸いと思う。

カリキュラム
 公衆衛生修士(Master of Public Health:MPH)のコースは、自分が専攻したClinical Effectiveness(CLE)のほか、Family and Community Health、Health Care Management and Policy、International Health、Law and Public Health、Occupational and Environmental Health、Quantitative Medicineの7つに分かれている。CLE専攻は7月から開催されるSummer sessionに参加する必要があるが、そのほかの専攻は9月から翌年5月までの9カ月のカリキュラムである。

 アメリカの公衆衛生大学院の多くは2年制を採用しているが、HSPHは1年制である。1年は短いような印象もあったが、臨床をしながらHSPHで学んだ知識を活用したいと考えていたので、臨床を2年離れるのは“勘”が鈍るのではないかという心配もあった。卒業して振り返ると、1年でちょうど良かったと思っている。

 HSPHのカリキュラムは非常にたくさんに分かれている。その中で特に優れたカリキュラムと感じたのが、夏のSummer sessionだけを3回(つまり3年間)受講するとMPHが取得できるシステムだった。学生の多くはハーバードの関連病院に勤務している医師である。「公衆衛生について学びたい」と思っても、休業して簡単に1年を確保できるという人は多くはないだろう。しかし、「2カ月ならば調整して何とか…」という人は少なくないと思う。

 このSummer session。医師の勤務体系や休暇日数が異なるので容易ではないだろうが、「日本でも導入されれば…」と切に感じた。医師不足の現況で、「2カ月の穴を誰がどうやって埋めるのか? 外来は? 病棟は? 」と、導入に当たってのハードルは高いだろう。だが、医師が勉強できる環境を整えることは、医師不足と同じくらい重要な課題と思う。今後の変化に期待したい。

 1年コースの学生の多くはFull-timeと呼ばれ、1年間で42.5単位を取得しなくてはならない。そのほか、Part-timeと呼ばれる、働きながら週に1~3つの講義を選択して必要な単位を取得し、MPHを取る人もいる。Full-timeの学生は1学年200人程度とのことであるが、Part-timeの学生も同じくらいいるそうだ。

卒業するには
 42.5単位以上を取得しなくてはならない。9カ月の中には、9月~12月のFall semester、2月~5月のSpring semesterという2つの大きな学期があり、1月にWinter sessionが開かれる。多くの学生はFall、Springで、約20単位ずつ取ることになる。

 卒業には必須科目が設けられており、好きな講義、興味がある講義だけで単位数をクリアーすることは不可能だ。MPHの必須科目には、(1)Ethics of Public Health Practice(2.5単位)、(2)Practice and Culminating Experience(2.5~5単位、専攻による)、(3)Biostatistics(5単位)、(4)Epidemiology(2.5単位)、(5)Environmental Health Science(2.5単位)、(6)Health Service Administration(2.5単位)、(7)Social and Behavioral Science(2.5単位)の20単位を取得しておく必要がある。(1)~(6)にはいくつかの講義が含まれており、その中から自ら選んで単位を取得する。

著者プロフィール

内山 伸(ハーバード公衆衛生大学院生)●うちやま のぼる氏。1999年佐賀医大(現佐賀大学)卒後、1999〜2001年聖路加国際病院内科レジデント、2001年同チーフレジデント、2002年同病院呼吸器内科。2007年7月留学。

連載の紹介

内山 伸の「ハーバード留学日記」
2007年7月から1年間、米国ハーバード公衆衛生大学院(Harvard School of Public Health)に留学した内山氏。日々の授業の内容や米国の医療事情、ボストンでの生活を紹介します。

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