娘にとって、これほどの災難だった日はこれからもないだろう。
娘は来年1月からプレスクールに入学するため、健康診断が必要になった。そこで、試験勉強の合間をぬって、ケンブリッジにある大学のクリニックに向かった。自分が加入している医療保険ではPrimary Care Physician(PCP)が決まっており、予約を取って診察を依頼する。
私たち家族のPCPはスーザン先生。中年で、感じのよい女医さんである。クリニックに行くと、まずNurse Practitionerと思われる女性が身長と体重、頭囲を測定する。といっても、日本でイメージするような身長測定ではなく、娘をベッドの上に寝かせ、頭と足にペンで目印を書いてメジャーで測るという、何ともアバウトなものだった。
しばらくしてスーザン先生が部屋に入ってきた。身長と体重を記入するグラフを見て、「問題なし。でも、どの予防接種をしなくてはいけないか、一緒に考えましょう」とのこと。日本にいたときに母子手帳を参考に予防接種歴を書いており、それをあらかじめ渡していたので、相談はかなりスムーズに行えた。
こちらに来て知ったことだが、母子手帳とは日本の優れた開発品ということだ。日本の母子保健にとっては非常に重要なアイテムで、この母子手帳を見ると、「いつ、どのような感染症に罹患したか」「どの予防接種を受けていて、どの予防接種を受けていないのか」がはっきり分かる。お子さんと共に渡米を考えている方は、母子手帳を参照して、英語で記載した予防接種歴を用意されておくことを強くお勧めする。
娘は、日本では予定されている予防接種はすべて受けていたが、日本と米国では必要とされる予防接種が異なる。スーザン先生は「日本の非常識がこちらでは常識ということもあるでしょ? 違いがあるのは仕方がないのよ」と付け加えて、必要な予防接種をリストアップしていった。
その結果、娘がプレスクールに入学するために現時点で必要な予防接種は最低5つ。A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、ヘモフィルス・インフルエンザB(Hib)ワクチン、肺炎球菌ワクチン(PCV)、ポリオワクチンが必要という。
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著者プロフィール
内山 伸(ハーバード公衆衛生大学院生)●うちやま のぼる氏。1999年佐賀医大(現佐賀大学)卒後、1999〜2001年聖路加国際病院内科レジデント、2001年同チーフレジデント、2002年同病院呼吸器内科。2007年7月留学。

連載の紹介
内山 伸の「ハーバード留学日記」
2007年7月から1年間、米国ハーバード公衆衛生大学院(Harvard School of Public Health)に留学した内山氏。日々の授業の内容や米国の医療事情、ボストンでの生活を紹介します。
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