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入局者が1人から11人に増えた理由

2013/06/03
津久井宏行

 新年度が始まり、既にふた月が過ぎました。毎年のことですが、新人が入ってくるこの時期は、何とも言えない新鮮な感覚があります。今年、東京女子医大心臓血管外科には、11人の新人が入局してくれました! これだけ多くの新入医局員を迎えたのは10年ぶりのこと。外科医不足が叫ばれる中、11人もの先生が当科の扉を叩いてくれたのは、うれしい限りです。

 昨年は1人、その前は2人と、ここのところ、当科の入局者数は低迷していました。そこで講じたのが、「若手は若手が集める」という方針転換でした。自分では若いつもりでいる私ですが、周りを見渡してみると、いつの間にか中堅。自分が研修医のころの上司と重ね合わせてみると、声を掛けるのも憚られた世代に入ってきてしまっていたのです。そんな世代になった私がいくら勧誘活動をしても、時代からはずれているだろうし、若手のニーズをつかめていないのではないかと考えました。

 そこで、医局の10年目以下の若手スタッフに新人勧誘作戦を依頼しました。彼らは、つい最近までの自分が研修医だったころの感覚を元に、本当にきめ細やかな勧誘活動をしてくれました。彼らにまず行ってもらったのが、今の初期研修医が後期研修に何を求めているのか、ニーズの徹底的な聞き取りです。

 内容の濃い研修? 忙しくないこと? 給与? 関連病院の立地? 将来の留学? 大学院への進学? 博士号の取得? などなど。そして、それらのニーズに対して、当科でできること、できないことを明確にしました。聞き取りの際、いたずらに媚びることもしないよう、留意してもらいました。

 そういった姿勢が心に響いたのが、今年の入局者だったのでしょう。結果として、11人を迎えることになったわけです。

若手が自発的に作ってくれた研修プログラムの出来に唸る
 10年ぶりに多数の新人を迎えるということで、医局では様々なディスカッションがなされました。一番問題となったのが、これだけの人数の新人に充実した教育を提供するにはどうしたら良いかということでした。

 私が入局したころは、「技術は見て、盗め!」という職人の世界。教育システムが確立されているわけでもなく、普段の診療の中から何となく習得していくというプロセスを繰り返し、ふと振り返ってみると、ある程度の知識、技術が身についている。こんな感じだったことは否めません。(この点を見ただけでも、世代が違いますね)

 しかし21世紀の今日、システマティックな教育が最も効率的であることは既に証明されています。「では、どうしたものか?」と繰り返されたディスカッションから、今までになかった試みとして、スタッフが自分の専門分野を中心に週1回の講義を行う活動が始まりました。

 講義を含めて中堅スタッフを旗振り役と想定して計画を練っていたとき、勧誘をしてくれた若手スタッフからメールが舞い込みました。「新人の教育プログラムを作ってみたんですが、こんなのでどうでしょうか?」。私が頼んだわけでもなんでもありません。「そんなに目新しいものでもないだろう」と高をくくりながら、送られてきたプログラムの内容を一見すると、「これはすごい!」。思わず、唸ってしまいました。

 教育プログラムを考える際、ついつい自分の基準で物を考えてしまい、我々中堅スタッフのレベルでは、「こんなこと知っているだろうから、教えるほどでもないか…」などと思って抜けてしまうことが多々あります。しかし、若手が組んでくれたプログラムは実践的で、新入医局員にとっては、痒いところに手が届くものでした。

著者プロフィール

津久井宏行(東京女子医大心臓血管外科准講師)●つくい ひろゆき氏。1995年新潟大卒。2003年渡米。06年ピッツバーグ大学メディカルセンターAdvanced Adult Cardiac Surgery Fellow。2009年より東京女子医大。

連載の紹介

津久井宏行の「アメリカ視点、日本マインド」
米国で6年間心臓外科医として働いた津久井氏。「米国の優れた点を取り入れ、日本の長所をもっと伸ばせば、日本の医療は絶対に良くなる」との信念の下、両国での臨床経験に基づいた現場発の医療改革案を発信します。

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