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あえて、アメリカで和食を食べてみた

2013/05/23
津久井宏行

ニューヨークの和食店で食べた「すき焼きのパイ包み」。

 普段は口にすることのできない名物料理に舌鼓を打つ。学会参加の楽しみの一つです。しかし、Mitral Conclave(前回参照)への参加でゴールデンウイークに訪れたニューヨークでは、意図して、和食を食べる予定を立てました。

 向こうに留学中の身ならまだしも、日本に住んでいるのに、わざわざアメリカで和食を食べることもなかろう…。こんな声が聞こえてきそうです。

 なぜ、和食なのか? それは、渡米直前に見たテレビ番組で、日本の有名料亭の料理長の言葉が心に響いたからでした。その料理長は最近、ロンドンに日本料理店を出しました。老舗料亭の伝統に縛られることなく、柔軟なアイデアで和食を提供しようというコンセプトで始まった店です。新しい和食の創作という工夫を繰り返すことで、実は伝統的な和食の実力も向上していくはずという信念の正しさを示すために、半ば実験のつもりで出店したそうです。

 「本家本元がいつでも一番と、胡坐をかいていてはいけない。その慢心が没落への第一歩である」。こんな中味のコメントがインタビューの中で印象的でした。「相撲にしろ、柔道にしろ、日本の伝統武道であるにも関わらず、今やトップは必ずしも日本人ではない。すべからく、和食に関しても海外で評価にさらされるべきで、実はその方が成長するのではないか」という発想です。

 開店当初の現地での評価はなかなか厳しく、滑り出しは決して順調ではないようでした。それでも現状に満足することなく、常に挑戦していこうとする料理長に自分を重ね合わせ、その真偽を確かめてみたいという好奇心に動かされ、わざわざニューヨークで和食と相成ったわけです。

著者プロフィール

津久井宏行(東京女子医大心臓血管外科准講師)●つくい ひろゆき氏。1995年新潟大卒。2003年渡米。06年ピッツバーグ大学メディカルセンターAdvanced Adult Cardiac Surgery Fellow。2009年より東京女子医大。

連載の紹介

津久井宏行の「アメリカ視点、日本マインド」
米国で6年間心臓外科医として働いた津久井氏。「米国の優れた点を取り入れ、日本の長所をもっと伸ばせば、日本の医療は絶対に良くなる」との信念の下、両国での臨床経験に基づいた現場発の医療改革案を発信します。

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