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「外科医が外来なんて」と思っていたが…

2012/11/30
津久井宏行

 アメリカで働いている頃は、「外科医の仕事=手術」といった感じで、術後の患者さんの外来診療は1~2回のみ。創部に問題がなければ、その後は紹介してくれた内科医や家庭医にお返しして、フォローアップしてもらうのが常でした。

 週1回の外来は半日だけ。なのに、枠がいっぱいになることはなく、空いた時間はさらに手術に集中できるという環境でした。

 対して日本では、最近は分業が進みつつあるとはいえ、術後の患者さんの経過観察を外科医が行っているケースはまだまだ多いでしょう。日本に帰ってきた当初は、「何て効率の悪いシステムなんだ…」と思ったものでした。しかしながら、外来診療を続けてみると見えてくるものがいろいろある。そんな気付きを、このところ実感しています。

フォローアップして分かった、創部の変化のパターン
 創部を例に取ると、術後に大きな問題がなければ、「外科医が今さら診る必要はないだろうに」と思っていました。しかし、実際に診てみると、創部は経年変化していき、そこにある程度のパターンが見えてくるのです。

 術後1~2カ月は、創部の痛みが残ることを訴える患者さんが多い。そして、術後半年までに、痛みの訴えはほとんどなくなります。代わりに、そのころから出てくるのがケロイドです。ケロイドが発生した患者さんがチラホラ見られるようになり、希望に合わせて形成外科を紹介するのがこの時期です。

 別の患者さんは、創部自体に問題はないのに、汗をかいた際にヒリヒリする痛みを自覚すると訴え始めます。心配ないことを説明し、安心してもらうように努めるのも、この時期の外来で起こることです。

 創部のヒリヒリ感も、術後1年くらいにはなくなっていきます。代わって、これくらいの時期から見られるのは、痩せている患者さんの痛みの訴え。胸骨閉鎖に使用したワイヤの突出部の痛みに対し、必要に応じて、ワイヤ抜去術の予約を入れます。

 こんな感じで、創部一つをとっても、個々の患者さんによって経過はバラエティに富み、経年変化します。これらのことは、お恥ずかしながら、最近まで知りませんでした。少しずつパターンが見えてくると、退院時の患者さんに対する説明も詳細にできるようになってきます。

著者プロフィール

津久井宏行(東京女子医大心臓血管外科准講師)●つくい ひろゆき氏。1995年新潟大卒。2003年渡米。06年ピッツバーグ大学メディカルセンターAdvanced Adult Cardiac Surgery Fellow。2009年より東京女子医大。

連載の紹介

津久井宏行の「アメリカ視点、日本マインド」
米国で6年間心臓外科医として働いた津久井氏。「米国の優れた点を取り入れ、日本の長所をもっと伸ばせば、日本の医療は絶対に良くなる」との信念の下、両国での臨床経験に基づいた現場発の医療改革案を発信します。

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