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ヨーロッパを旅して思った(その1)
Professionへの信頼と尊重、果たして日本には?

2012/10/31
津久井宏行

ドイツのデュッセルドルフ大学心臓血管外科で、紙谷寛之先生と。

 先日、ドイツとベルギーに手術見学に行ってまいりました。旅は、いつも新しい発見や気付きを与えてくれるものです。今回も実り多い旅でした。その中で印象に残ったことをご紹介しましょう。

 最初の訪問地は、ドイツのデュッセルドルフ大学心臓血管外科でした。Lichtenberg主任教授が率いるこちらの教室には、日本から紙谷寛之先生と宗像宏先生が留学されていて、日々、たくさんの手術を執刀されているとのこと。その一端を見学させてもらいました。滞在中、お忙しいにもかかわらず、両先生には非常に親切にしていただき、大変感謝しております。改めてこの場を借りて、お礼を申し上げたいと思います。

 ドイツは、ヨーロッパの中でも先進医療の導入が早いことで有名です。私が関与する心臓血管外科領域では、人工心臓、人工弁、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)、動脈瘤に対するステント治療(EVAR、TEVAR)など 。これまで世界に先駆けて導入されたデバイスは、枚挙に暇がありません。

 日本はもちろんのこと、今や米国よりも新技術の導入は早いほど。国際学会でその成果が発表され、「日本に導入されるのはいつのことやら…」と日本の外科医たちが羨望の眼差しを向けるという構図がすっかり定着しています。

 日本で間もなく(ようやく)導入されるであろうTAVRは、ドイツではすっかり定着しているという段階まで進んでいます。大動脈弁置換術の30%程度がTAVRによって行われているという報告もあり、驚くばかりです。

 日本でもデバイスの承認審査期間はだいぶ短縮されてきているようですが、欧米並みになるにはまだまだ時間がかかりそうです。

 どうして日本では、新しいデバイスの導入がこうも遅いのか? まず一つは、医療機器を審査できる知識や経験を有した人が少ない(いない?)ことが原因といわれています。この点に関しては改善されてきているようですが、今後もいっそうの改善が必要でしょう。

 さらに考えてみると、承認する側の心理として、新しいデバイスを認可して不具合が発生したら、責任問題になって困る。だから、諸外国での臨床成績が出そろうまで待とう。こういった後ろ向きな風潮が挙げられるのではないでしょうか。それでは、いつになっても世界のトップを走れるようにはなりません。

先進医療を後押ししているのは信頼と尊重
 どうして日本ではこういった後ろ向きな風潮が蔓延してしまうのでしょうか? 滞在中、紙谷先生との会話の中で、思いがけないヒントが見つかりました。

著者プロフィール

津久井宏行(東京女子医大心臓血管外科准講師)●つくい ひろゆき氏。1995年新潟大卒。2003年渡米。06年ピッツバーグ大学メディカルセンターAdvanced Adult Cardiac Surgery Fellow。2009年より東京女子医大。

連載の紹介

津久井宏行の「アメリカ視点、日本マインド」
米国で6年間心臓外科医として働いた津久井氏。「米国の優れた点を取り入れ、日本の長所をもっと伸ばせば、日本の医療は絶対に良くなる」との信念の下、両国での臨床経験に基づいた現場発の医療改革案を発信します。

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