日経メディカルのロゴ画像

大先輩の“生の言葉”の重み

2010/07/14
津久井宏行

 人生の大先輩から、学ぶべきことは非常に多い。私は、大先輩と話をする機会を積極的に探すようにしている。そして、その機会が得られたときには、変な遠慮はせず、“懐に入っていく”ような気持ちで、率直に意見を聞くようにしている。後輩にも、ぜひそうするように勧めているが、多くは尻込みしてしまい、なかなか実行に移せないようだ。今回は、大先輩から話を聞くことが、いかに興味深いものであるか、私の経験を示したい。

「自分を戒めよ」
 先日、東京女子医大心臓血管外科、循環器内科、小児循環器科の同門会が、合同で「榊原仟先生生誕100年記念祝賀会」を開催した。榊原仟(さかきばら しげる)先生は「日本の心臓外科の父」とも称される心臓外科の世界的権威。その生誕100年記念祝賀会の会場には、榊原先生の下で“修行”(トレーニングという言葉は似合わないような気がする)した“弟子”が集まった。“弟子”といっても、現在80歳を超える先生もおり、私からすれば大先輩。まさに日本の心臓外科をリードしてきた先生方と直接お会いできる機会だった。

 祝賀会は盛況のうちに終了。その後、反省会と称して、本会を主催された先生方と膝を交じえてお話する機会を得た。隣には元東京慈恵会医大教授の新井達太先生。私は研修医のころ、新井先生が書かれた『心疾患の診断と手術』という教科書を、当直しながら読んだものだった(ときには枕代わりになっていた気もするが…)。その新井先生とお話しできるということで少々緊張しながら、「新井先生は、今まで心臓外科医として大事にしてきたことは何ですか?」とお聞きした。

 抽象的で答えにくい質問であったにもかかわらず、新井先生は次のようにお答えになった。

 「これは榊原先生も常々、おっしゃっていたことだけれど、『病気は、医者が治すものではなく、患者が自分で治すものであって、われわれはそれを少しだけ、お手伝いするだけの仕事なんだ』ということを、いつも心掛けることでしょうか。ときとして、『自分が患者を治したのだ』と思ったり、周りからそのように賞賛されることがあるかもしれないが、そんなときこそ、自分をしっかり戒めないといけないのです」

 非常に謙虚なお答えに感動しながら、さらにいろいろなお話をうかがった。びっくりしたのは、新井先生がこの4月からギリシャ語の勉強を始められたということ。「医者は、本業以外にも何か勉強し続けなければダメだよ」とアドバイスをいただき、つくづく「私の同門には、すごい先生がいらっしゃるものだ」と感服した次第だ。

「何を学びたいのか、そして、それを誰から学びたいのか」
 もう一人の大先輩は、ベルリンで開催された第13回国際低侵襲心臓外科学会(ISMICS)の「International Fellows and Residents Luncheon」のセッションに、アドバイザーとして同席してくださったJames Cox先生。

著者プロフィール

津久井宏行(東京女子医大心臓血管外科准講師)●つくい ひろゆき氏。1995年新潟大卒。2003年渡米。06年ピッツバーグ大学メディカルセンターAdvanced Adult Cardiac Surgery Fellow。2009年より東京女子医大。

連載の紹介

津久井宏行の「アメリカ視点、日本マインド」
米国で6年間心臓外科医として働いた津久井氏。「米国の優れた点を取り入れ、日本の長所をもっと伸ばせば、日本の医療は絶対に良くなる」との信念の下、両国での臨床経験に基づいた現場発の医療改革案を発信します。

この記事を読んでいる人におすすめ