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卒後10年目からのキャリア形成に悩む先生方へ

2010/04/28
津久井宏行

 卒後10年目を迎えるころ―。一通りのことはできるようになったものの、「じゃ、明日から一人でやってみろ」と言われると、まだ心もとなく、もうワンランク上を目指し始める時期ではないだろうか。私も、そのころ自身の将来について思い悩んでいたことを思い出す(まあ、今も悩みは続いているが…)。

 最近、医局の卒後10年目の先生たちと、卒後10年目のキャリア形成について話し合う機会があった。彼らは初期研修医制度がスタートする前の世代で、自分自身が研修医のときはもちろんのこと、研修医制度が始まって新人研修医の入局が激減した時代にも、必死に現場を支えてきた、まさに“縁の下の力持ち”だ。そんな彼らの今後のキャリア形成とあっては、なんとか力になりたいと考えている。

 彼らは、学位取得、専門医取得、臨床経験の蓄積、海外留学などのビジョンを語ってくれた。しかし、どうも歯切れが悪い。

 こういったビジョンを実現するためには、環境の変化や経済的負担を伴う。卒後10年目ともなると、結婚し家族を養っている人が多くなる。引越しや子供の教育、家族の希望を考えると、独身だった研修医のときのように、簡単に決断することができず、なかなか最初の一歩が踏み出せずにいるようだ。

 私は、「海外留学+臨床経験」を選択したのだが、そのときには当然のことながら、引越し、経済的負担といった“負の側面”も伴った。今考えても、慣れない環境の中、がんばってくれた妻や家族には、どれだけ感謝しても感謝しきれない。しかし、留学して得られた経験や知識、人とのつながりは、何ものにも代え難く、良い選択だったと思う。

 彼らから聞こえてくるもう一つの声は、「どの方向に進んでいったらよいのか分からない」というものだ。

 例えば、心臓血管外科で考えると、15年ほど前までは冠動脈バイパス術(CABG)全盛で、誰もが取得したい手術手技であったが、現在では、カテーテル治療の躍進により、かつてのような必要性は薄れてきている。その代わり、胸部、腹部大動脈瘤に対するステント治療の発展は目覚ましく、その技術を取得したいという医師は増える一方だ。

 しかし、既に流行っているものを後追いしても、その手技を身に付けたころには全盛期を過ぎているという可能性もある。CABGの二の舞になるのでは、という警戒心も働き、結局、何を身に付ければよいのか、分からなくなってしまうようだ。未来を予測するのは、本当に難しい。ではどうしたらよいか―。私には、悩みながらたどり着いた“結論”のようなものがある。

著者プロフィール

津久井宏行(東京女子医大心臓血管外科准講師)●つくい ひろゆき氏。1995年新潟大卒。2003年渡米。06年ピッツバーグ大学メディカルセンターAdvanced Adult Cardiac Surgery Fellow。2009年より東京女子医大。

連載の紹介

津久井宏行の「アメリカ視点、日本マインド」
米国で6年間心臓外科医として働いた津久井氏。「米国の優れた点を取り入れ、日本の長所をもっと伸ばせば、日本の医療は絶対に良くなる」との信念の下、両国での臨床経験に基づいた現場発の医療改革案を発信します。

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