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「医工連携」は進むよ、どこまでも

2009/12/24
津久井宏行

 「EBM」といえばEvidence-Based Medicine、エビデンスに基づいた医療を思い浮かべるが、もう一つの「EBM」をご存知だろうか。もう一つの「EBM」とは、Engineering Based Medicine、つまり工学に基づいた医療、「医工連携」だ。

 日本では「医工連携」はまだまだ始まったばかりだ。2008年4月、東京女子医科大学と早稲田大学が、医工連携を目指して研究施設「TWIns」(東京女子医科大学・早稲田大学連携先端生命医科学研究教育施設)を創設したのは画期的なことだと思う。

 先日、このTWInsにて、早稲田大学先端生命医科学センター長の梅津光生先生の旗振りで、「循環器系ドライラボの創設ともう一つのEBM:Engineering Based Medicineの推進」と題したシンポジウムが開催され、私も参加させていただいた。以前、このブログでも紹介させていただいた(2009.6.3「日本発のバイパス手術トレーニング装置を知ってますか?」)、冠状動脈バイパス手術トレーニング装置を開発している早稲田大学理工学術院の朴栄光君との共同発表であった。

 今や、この装置は、2年連続でアメリカ胸部外科学会(Society of Thoracic Surgeons)の「外科医トレーニングセッション」で使用されるまでに、認知度が上がってきている。また、国内でも慶応大や阪大を始めとして、多くの施設が購入しているのみならず、個人的に購入している若手外科医の先生方もいらっしゃるようで、共同開発をした私としても、うれしい限りだ。

 シンポジウムでは、私たちのほか、多彩な演者が登場した。早稲田大学高等研究所 客員准教授の岩﨑清隆先生は、冠動脈用ステントの耐久性評価システムに関する研究成果を発表した。現在、冠動脈病変に対する治療といえばステントの全盛時代であるが、ステント留置後の破損の危険性が指摘されているという。しかしステントの耐久性は、体内に留置後、数カ月~数年を経て、劣化し破損することにより判明する。時間もかかるし、生体内の状況は異なるのでデータを単純に比較することができない。

 この問題を解決するため、岩﨑先生は、短期間に多種類のステントの耐久性を評価するためのシステムを作り上げた。このシステムを使って各社のステントを評価した結果、ステントの製品ごとに耐久性が異なることが明らかになったという。

 また、早稲田大学理工学術院助手の八木高伸先生は、脳動脈瘤の破裂機序に関する実験モデルを開発している。素人考えでは、動脈瘤が大きければ大きいほど、破裂し易いように考えがちだが、さにあらず。八木先生によると、血液の流れ方や、ずり応力により、破裂のし易さが決定されるという。そして八木先生は、この「破裂のし易さ」をComputational Fluid Dynamics (CFD)という手法で計測し、脳動脈瘤の手術適応や手術時期を決定する方法を研究している。

著者プロフィール

津久井宏行(東京女子医大心臓血管外科准講師)●つくい ひろゆき氏。1995年新潟大卒。2003年渡米。06年ピッツバーグ大学メディカルセンターAdvanced Adult Cardiac Surgery Fellow。2009年より東京女子医大。

連載の紹介

津久井宏行の「アメリカ視点、日本マインド」
米国で6年間心臓外科医として働いた津久井氏。「米国の優れた点を取り入れ、日本の長所をもっと伸ばせば、日本の医療は絶対に良くなる」との信念の下、両国での臨床経験に基づいた現場発の医療改革案を発信します。

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