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アメリカ人はなぜプレゼンが上手いのか

2009/08/26
津久井宏行

 アメリカで学会に参加するたびに感心させられたのは、欧米人のプレゼンテーション能力の高さだった。発表内容的には“ソコソコ”でも、聞いているうちになんとなく素晴らしい発表のように感じさせられる(失礼)。恥ずかしがることなく、聴衆を見つめ、自信に満ちあふれた表情で語りかける彼らの姿が、そう感じさせたのだろう。

 日本に帰国後、学会に参加したとき、日本人のプレゼンテーション能力もだいぶレベルが上がったように感じたものの、やはり彼らと比べると、まだまだ劣る感は否めなかった。

米国の幼稚園は学会さながら
 渡米当初、彼らのプレゼンテーションに接し、自分との差に愕然とさせられた。引け目を感じずにはいられなかった。どうして彼らはプレゼンテーションが上手いのか?という疑問を抱いた。

 そんなある日、息子の幼稚園の授業参観に行った。その日は、「Show and Tell」という授業が行なわれていた。日本の教育しか知らない私にとっては、新鮮な体験であった。

 「Show and Tell」とは、ある話題に関して、みんなの前で1~2分程度話をするというもの。その日のお題は、「My Favorite Things:私の好きなもの」。各々が、自分のお気に入りを持ち寄って、「それは何か」「どうして、自分はそれが好きなのか」ということをみんなの前で発表し、その後、みんなから質問を受ける。

 「幼稚園児に、そんな高度な受け答えができるのか?」という疑問を持ちながら、授業を観た。すると、ある子は、自分の大好きな超合金ロボット(私の世代でも流行ったものだ)の説明を始めた。クリスマスプレゼントにサンタさんからもらった物で、車が変身してロボットになる、と話しながら、変身する過程を披露してくれた。そして「次は、○×という別の超合金ロボットがほしい」といったことまで話していた。質問を受ける時間になると、教室の子供たちの多くが手を挙げて、「名前はなんていうの?」「ミサイルは出るの?」と思い思いの質問をする。つたない内容ではあるが、そのやり取りを見ているうちに、私は「まるで学会みたいだ」と感じさせられた。

 こんな感じの「Show and Tell」の当番が、一人ひとりに月に何回か回ってくる。そのたびに、お題に合わせてプレゼンテーションの準備をするわけだ。私も時折、子供のプレゼンテーションの準備を手伝ったが、それなりに努力が必要だ。手伝いながら、「なるほど、幼稚園のころから、こんな練習をしていけば、プレゼンテーション能力に磨きがかかるはずだ」と実感。毎月“学会発表”をしているのと同じなのだから…。

手術の待ち時間でプレゼン能力を磨く
 手術室での待ち時間などに、後輩や看護師さんに「この週末、何をやった?」と話を振ると、多くの場合、「買い物に行って、食事をして…」とか「家族とバーベキューをしに行った」とか、一辺倒のプレゼンテーションが多い。そんなとき、私が「今の話を、聞いている人が面白くて、続きを聞きたくなるように話してみてくれない?」と“ダメ出し”をすると、多くの場合「うーん」と唸ってしまう。プレゼンテーションに慣れていないため、なかなか話を膨らませることができないようだ。

著者プロフィール

津久井宏行(東京女子医大心臓血管外科准講師)●つくい ひろゆき氏。1995年新潟大卒。2003年渡米。06年ピッツバーグ大学メディカルセンターAdvanced Adult Cardiac Surgery Fellow。2009年より東京女子医大。

連載の紹介

津久井宏行の「アメリカ視点、日本マインド」
米国で6年間心臓外科医として働いた津久井氏。「米国の優れた点を取り入れ、日本の長所をもっと伸ばせば、日本の医療は絶対に良くなる」との信念の下、両国での臨床経験に基づいた現場発の医療改革案を発信します。

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