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潤沢な研究費ががんセンターを硬直化させた

2010/06/25

 現在、国立がん研究センター中央病院は、嘉山孝正理事長の下で組織改革が進められています。がんセンターの最大の役割の1つにがん研究がありますが、その研究費の使い方について、以前から私が感じていたことをお話ししたいと思います。

 私は医師になって3年目、当時設立10年にも満たない国立がんセンター中央病院に研修に行きました。当時のがんセンターは勢いがあり、「著名な先生方がいる癌研に追いつき追い越せ」という活気にあふれた雰囲気がありました。4人のレジデントに対して、上の先生方が朝から晩まで講義をしてくださり、新しく入る仲間にいろんなことを教え込もうという熱意が大変伝わってきたものです。

 ところが、最近のがんセンターは、制度疲労を起こしています。がんセンターは今年設立48年。ほぼ半世紀たって、麻薬漬けならぬ「研究費漬け」になっているのです。日本の研究費は米国に比べて多くありません。ですが、がんセンターだけは違います。中にいる限りは、研究費が潤沢にあるのです。癌研に移ってみると余計にそう強く感じます。

 その背景には、がん研究費の配分の大きな偏りがあります。現在、厚生労働省が配分するがん研究費は、2種類、70億円程度(2009年度)あります。1つ目は「がん研究助成金」。2つ目は3期目に入ったがん対策10か年戦略の「対がん研究費」です。どちらの研究費も、がんセンターが実質の権限を握っており、研究者や国民が納得するような公平な分配がなされていないのです。

「お手盛り」の助成金
 まずは、1つ目のがん研究助成金について。これは1963年から厚労省が用意している助成金で約19億円あり、「がんセンター内の研究のためのお金」という解釈で扱われています。

 84年からは、がんの本態の解明に向けた「対がん10カ年総合戦略」も始まりました。この「対がん研究費」が2つ目の研究費で、第3次となった現在も年間50数億円のお金が投入されています。第1次の際は、科学技術庁と文部科学省と厚労省が3等分して受け取っており、その科技庁の部分は重粒子線治療につぎ込まれたのですが、がんセンターは厚労省の管轄の分をまるまる受け取っていたのです。

著者プロフィール

土屋了介(癌研究所顧問)●つちや りょうすけ氏 1970年慶応義塾大学医学部卒。慶応病院外科、国立がんセンター病院外科を経て、2010年3月まで国立がんセンター中央病院院長。 同年4月より現職。

連載の紹介

土屋了介の「すべて話そう」
医学教育や医療提供体制などに造詣が深く、超党派による「医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟」では医療顧問も務めるなど、政治とのパイプも太い土屋氏が、日本医療の将来に向けた私論を展開します

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