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混合診療は「自己責任」を前提に解禁すべき

2010/06/03

 私が国立がん研究センターを辞めて2カ月が経過しました。現在は、癌研究会の顧問として働いています。さて、今改めて、がんセンターを辞めたことを振り返ってみると、行政刷新担当大臣仙谷由人氏や厚生労働大臣長妻昭氏の力もあって、がんセンターを新しい方向に切り替えることはできたのではないかと思っています。次のステップに進むのは生半可なことではありませんが、これはがん研究センター初代理事長となった嘉山孝正先生にやっていただくしかありません。これからは外野として応援していきたいと思います。

 さて、今回は行政刷新会議の話をしたいと思います。私は同会議の規制・制度改革に関する分科会のライフイノベーションワーキンググループの仕事をしています。自民党政権下の規制改革会議と異なり今回は「制度改革」もうたわれています。参議院選挙前には一定の成果を出したいというスケジュールの大変さはありますが、まずは供給者目線から消費者目線へパラダイムシフトを促していきたいと思います。また、会議は日本郵船取締役・相談役の草刈隆郎氏や、松井証券社長の松井道夫氏など、規制改革会議とメンバーが重なっていますが、これは「これまでの流れを背負って」という後ろ向きなものではなく、着々とやっていたことが民主党政権の方にも認められたのだと私は解釈しています。

混合診療解禁は「自己責任ありき」
 今回のライフイノベーションワーキンググループでは、混合診療や、一般用医薬品のインターネット販売診療看護師医療ツーリズムなどが取り上げられました。中でも最も大きな議題は、混合診療の解禁の是非でしょう。

 私は混合診療解禁論者ですが、現在の制度のまま解禁すればよいとは思っていません。現在の先進医療のように、一度安全性が認められればその後チェックされない状況では、誰も責任を取らないからです。例えば保険外療養の適応について、厚生労働省の担当者は「混合診療など議論しなくても、先進医療などでやっているじゃないか」と言います。ですが、先進医療にしろ、高度先進医療にしろ「これは安全だから行ってもいいよ」という制度です。本当に安全だと判断できるようなデータがあるならば、別に保険で認めればいい。それ以外の医療をどのように行っていくかが、問題なのです。

 だからこそ、安全性について線を引くのではなく、「やる以上はその観察をしっかりしろよ、問題が起こったらきちんと対処して報告しろよ」というのが筋ではないでしょうか。チェックや対処を怠った際には、その病院をつぶしてしまうくらい、厳しい態度で臨んでもいいでしょう。患者さんも「国が認めた治療だから」ということではなく、自分の責任で、その病院を信用して、自分で選んで治療を受けることになるのです。その場合、国に責任はありません。国はデータを集めるだけで、いいとも悪いとも言っていないわけです。

著者プロフィール

土屋了介(癌研究所顧問)●つちや りょうすけ氏 1970年慶応義塾大学医学部卒。慶応病院外科、国立がんセンター病院外科を経て、2010年3月まで国立がんセンター中央病院院長。 同年4月より現職。

連載の紹介

土屋了介の「すべて話そう」
医学教育や医療提供体制などに造詣が深く、超党派による「医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟」では医療顧問も務めるなど、政治とのパイプも太い土屋氏が、日本医療の将来に向けた私論を展開します

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