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国立がんセンターの理事長は医師以外がなるべき

2010/01/12

 2008年10月からこれまで、「良医を作る」というタイトルで、医師の教育制度について述べてきました。ですが、私が班長を務めてきた、厚生労働省の「医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究班」も終了しましたので、もう少し広い分野の話を随時取り上げてみたいと思います。これからしばらくは、2010年4月に迫った「国立がんセンターの独立行政法人化」について、述べていきます。

 独立行政法人化は小泉純一郎首相が執り行った改革の一つで、「民でできることは民で」という流れの中に位置します。民主党政権に変わってもその流れは変わっていません。ただ、昨年の11月から12月にかけて、内閣官房に「独立行政法人ガバナンス検討チーム」が設置され、その席上で文部科学副大臣の鈴木寛氏は「独立行政法人は英国における“エージェンシー”と民主党では解釈している」と発言されました。すなわち、民主党政権下における独立行政法人とは、「完全な民営化に移行するつなぎか、いずれまた国の組織として戻すべきかという移行措置」という位置付けのようです。

がんセンターは国立であるべきだが、独法化はチャンスの一面も
 時々誤解を受けるのですが、私は「がんセンターは国立であるべきだ」というのが基本的なスタンスです。がんセンターには病院機能だけでなく、情報を集めたり、がん対策基本法に基づいていろいろな政策を進めていく機能もあるからです。米国でいえば国立がん研究所(NCI)が行っているような業務になりますが、これらは国が行っていくべきでしょう。

 ところが、こと中央病院長として病院の経営のことを考えるとなると、民営化してもらった方がありがたいことが多くあります。例えば、私には医師以外の人事権がありません(正確には総長が人事権を持っていますが、病院長が実質的に医師の人事を取りまとめます)。

 事務の人事権がないので休暇などの情報が院長に上がってきませんし、看護師の人事権がないのでわれわれが知らないところで別の病院に異動が決まります。事務や看護師の人事について、2週間前に厚労省の専門官や看護課長から「これで内示が決まりました」と報告だけ受けるような状態では、いい病院経営は難しいでしょう。

 また、国立病院の職員は公務員になりますから、総定員法に縛られて定員の調整もままなりません。書類書きなどの業務を事務に振り、医師が臨床に集中できるようにすれば、現在の倍の手術もできるでしょう。ところが今は、定員枠のせいでその事務や看護助手の人数を増やせないのです。

著者プロフィール

土屋了介(癌研究所顧問)●つちや りょうすけ氏 1970年慶応義塾大学医学部卒。慶応病院外科、国立がんセンター病院外科を経て、2010年3月まで国立がんセンター中央病院院長。 同年4月より現職。

連載の紹介

土屋了介の「すべて話そう」
医学教育や医療提供体制などに造詣が深く、超党派による「医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟」では医療顧問も務めるなど、政治とのパイプも太い土屋氏が、日本医療の将来に向けた私論を展開します

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