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納入価が保険償還価格より高いのってそんなにヘン?

2011/07/01

 医療現場には“業者さん”呼ばれる人たちがいます。医薬品や医療機器・材料を届けてくれるの社員さんたちです。

 診療科によって少々違いはありますが、その分野のメーカー情報に精通し、顧客、つまり私たち医師の性格や好み、実力、施設の特徴をも把握していて、モノの調達や情報の提供を通じて臨床現場を支えてくれています。流通ルートを少しばかり間延びさせて、その分コストも発生しますが、この国の複雑系医療体制においては、とても重要な役割を果たしてくれていると僕は思っています。

日本を見放しつつあるメーカー
 一方、彼らの取引先であり我々の職場である病院は、大量購入や物品の標準化によるコスト削減に必死です。医療費抑制時代においては、医療材料費の圧縮が避けて通れなくなっているからです。こうした流れの中で、これらの「業者さん」の存在による中間コストを単にムダと決めつけて、排除または軽視する動きは広がるばかりです。

 ご存じのようにわが国では、医療機関が診療時に使用する医療材料のコストは、原則として国が定める保険償還価格によって償還される仕組みになっています。そこで、病院とすれば差益を得たいがために、納入価格が低い材料、または同じ材料でも安く納入してくれる業者を選択しがちです。

 一方、メーカー・卸としてはこれまで、標準価格を保険償還価格より低く設定するのが一般的でした。しかし、僕の守備範囲である心臓外科の分野では、保険償還価格が下落する中、顧客サービスの維持や商品開発のために回す利益を確保できないとの理由から、標準価格が保険償還価格より高く設定されている材料も最近増えてきました。まれには、納入価が保険償還価格を上回る例もあります。

 僕は個人的には、この傾向を必ずしも悪いこととは思いません。そもそもこの国の医療経済体制にはかなり無理があります。医薬品や医療機器・材料の承認過程は煩雑で、その分、手間もコストもかかる。例えばステントグラフトの領域では、既に日本をマーケットから外している例もあります。また、海外展開している日本企業の中にも、国内から撤退する動きが出ています。日本はまさに、医療後進国となりつつあるわけです。こうした状況を考えると、限度を超えた価格競争から距離を置くメーカーや卸があっても不思議はないと思うからです。

「わたしは異動してきたばかりなので、分かりません」
 話をちょっと戻します。先で触れた“業者さん”の排除は、一般にSPDといわれる物流・物品管理システムの普及に伴い進んできました。

 SPDにもいろいろなパターンがありますが、病院が院内の物品・物流管理を請け負う1社と契約し、この会社が院内の物品を発注から補充まで一括管理するのがよくある形です。物流の窓口はこの会社だけになるため、既存の“業者さん”はこの物流管理会社に納入する形となり、病院の各セクションとの接点はなくなります。病院側の在庫管理の手間の軽減や在庫の圧縮といったメリットを期待して、導入されるのが一般的です。

 このシステム自体は、必ずしも悪いものではありません。ただ、SPD事業者を管理する病院の事務部門が頼りないと、現場にもろにしわ寄せが来ます。そして実際には、そうしたケースが非常に多く見聞されます。

連載の紹介

昭和大元教授「手取屋岳夫の独り言」
「最近の日本の医療って、ちょっとおかしくない?」…と愚痴は出るものの、医師という仕事はやっぱり素晴らしい!一外科医として、大学教授として、教育者として感じた喜び・憤り・疑問などを、時に熱く、時には軽〜く、語ります。

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