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外科にブラックジャックは必要ない!

2010/11/19

 今年の欧州心臓胸部外科学会EACTS)は、9月、レマン湖に映るモンブランの山並みが美しいスイス・ジュネーブで行われました。最近、この学会の開催地は、ジュネーブ、ウイーン、リスボンの3都市でローテーションされています。もちろんいずれも素晴らしい都市なのですが、日本くんだりから高いお金を払ってわざわざ出かける身としては、もうちょっと頭を使ってほしいって思ったりもします。

 それにしても、ジュネーブの宿探しはいつも一苦労です。登山とスキーのリゾート地として知られるシャモニーの玄関口、高級時計の本場、レマン湖観光の拠点という顔を持つほか、国連の施設が立ち並ぶ国際観光都市。その上、市の中心部までは空港からタクシーで10分というアクセスの良さ。人気の都市だけに、とにかく宿が見つからない。

 苦労の末にやっと1室見つかったと思ったら、1泊なんと1200スイスフラン(今のレートで約10万円)!さらには連泊もできない状況だったので、泣く泣くお隣のフランスに宿を取っての学会出張となりました。

 学会での自分の発表は、感染性心内膜炎のため大動脈弁と僧帽弁がズタズタになってしまった症例を、Louis Pradel呼吸器循環器病院J.F.Obadia先生の報告を参考にして、ちょっと変わった方法で乗り切った手術のビデオでした。2つの人工弁のサイズ決定や心房再建の手法が比較的簡単で、再現性も高いと考えて発表したのですが、「ちょっとやり過ぎなんじゃない?」って意見が多かったみたいです。ただ、支持してくれる人もちょこっといたようなので、まぁいいか!

 会期中は、8月末にストックホルムで開催された欧州心臓学会(ESC)での、「心筋血行再建に対するガイドライン」が話題になっていました。11月にうちの大学にライブ手術で来てもらうSan Donato病院心臓外科のLorenzo Menicantti先生も委員の1人だったガイドライン委員会には、心臓外科医、インターベンション専門医だけでなく、循環器全般を診ている循環器内科医も含まれていて、「議論の幅も広がり、バランスの取れた内容になった」と彼は満足気でした。

 虚血性心疾患治療においては、循環器内科医が手がける冠動脈カテーテル治療PCI)の活躍の場がどんどん広がっており、治療スタンダードの移行は否めないと感じています。一方、われわれ心臓外科医の“十八番”である冠動脈バイパス手術CABG)は、ほとんどあらゆる冠動脈の状態に対応でき、成績が安定していて、1度で血行の完全再建が可能という特徴があるものの、最近では、PCIのスーパーサブという位置づけでいいんじゃないかって思っています。

 そのイメージは、ピンチの際にベンチから出てきて決定的な仕事をする驚異の6th Man、翔陽高校の藤真健司ってところでしょうか(「スラムダンク」の愛読者じゃないと分かりませんね、この例え)。頼れる控えがいるからこそ、レギュラーも全力で試合に臨めるってものでしょう。

連載の紹介

昭和大元教授「手取屋岳夫の独り言」
「最近の日本の医療って、ちょっとおかしくない?」…と愚痴は出るものの、医師という仕事はやっぱり素晴らしい!一外科医として、大学教授として、教育者として感じた喜び・憤り・疑問などを、時に熱く、時には軽〜く、語ります。

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