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「あなたは本当に生きているのですか?」-広がる“生死不明社会”

2010/08/17

 学生時代に、ローマ法の泰斗・柴田光蔵先生の授業だったか、先生の著書だったかで以下の概念を知り、確かに難しいなと、考え込んだことがあります。
 
「あなたは、本当にあなたか?こう聞かれたときの証明は至難の業である。身分証明書があったとしても、偽造した可能性もある。親兄弟を連れてきて証言してもらっても、誰かがその人を偽っているかもしれない。人がその人であるという証明は、本当に難しい」

 こんな昔話を思い出したのは、生死不明高齢者が多数に上ることが発覚し、大きく報道されたからです。8月15日付読売新聞によると、同社調査では、全国の100歳以上の高齢者不明者数は14日現在、20都道府県(52市区町)で計242人に上っているそうです。

 このニュースを初めて耳にした時に私は、ほとんどのケースが、高齢者の遺族が本人の死後も、年金を不正に受給するために死亡を隠匿したものではないかと推測しました。

 しかし、その後の報道によると、年金不正受給目的以外にもさまざまなケースがあるようです。認知症による徘徊や放浪癖などで家を出たまま行方不明になってしまったり、家族が捜索願を警察に出したものの、市町村に連絡が行かなかったなどです。

 今回調査対象になった100歳以上の高齢者に限らず、日本の法律では、行方不明になった人の存在がなかなか判明しにくい仕組みになっています。

 民法の第30条は、「失踪の宣告」の制度を、以下のように定めています。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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