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私立歯学部の定員割れ、ロースクール廃院―医学部増員はどうなる?

2010/06/01

 4月30日付の読売新聞によると、「日本私立歯科大学協会」のまとめで、今春も全国17校のうち11校の歯学部入学者が定員を満たさず、昨年よりもさらに定員割れが拡大していることが分かったそうです。

 同協会によると、今春の入試は、募集定員1891人(前年度比13人減)に対し、4318人(同655人減)が受験し、1489人(同213人減)が入学しました。定員割れの校数は前年度と同じでしたが、全体の欠員率は昨春の倍の2割に達したそうです。

 やはりこの事態には、以前にこのブログでお話しした歯科診療所の過当競争が大きく影響しているものと思われます(関連記事:2009.9.18「ここまで来た!歯科医院の過当競争」)。入学金、授業料、その他もろもろ高額な学費を投じて歯科医になったにもかかわらず、卒業後の就職先が少ないためワーキングプアになる可能性があり、開業しても経営はなかなか困難と聞けば、歯大への進学を敬遠する動きが広がるのも致し方ないでしょう。

 法曹養成にも似た現象が起こっています。5月28日に新聞各紙は、兵庫県の姫路獨協大学法科大学院が、来年度以降の学生の募集を停止することを決めたと報じました。全国に74校ある法科大学院のうち、運営そのものから撤退するのは全国で初めてです。同法科大学院は、今年1月に行った入学試験で合格者が1人も出ず、再募集もしなかったため、今年度は入学者がいません。大学院側も法科大学院で十分な能力のある学生を確保するのは困難だという結論に達し、来年度以降の募集停止を決定。現在在籍している学生が修了した後は、法科大学院の運営から撤退するそうです。

 廃院に至った原因は、この大学院の司法試験合格者数が3人と全国の法科大学院で最も少なく、中央教育審議会から「大幅な改善が必要」と指摘されていたという事情もあります。ただ、弁護士の過剰感や新人弁護士の就職難で、法科大学院への受験者数自体が減っているという背景も見逃せません。

 歯科医院の過当競争について取り上げた記事でもお話ししましたが、新人弁護士の中には、イソ弁(勤務新入弁護士)として就職することが困難なため、ノキ弁(固定給なしで事務所に置かせてもらう新人弁護士)で法律事務所に縁を求めるが、それも困難で即タク弁(資格取得後すぐに自宅を事務所として開業)、あるいはケイタイ弁(携帯電話片手に仕事を求めて走り回る新人弁護士)と呼ばれるような形で活動開始を余儀なくされる人が出てきました。

 さらに、今年の11月からは司法修習生に給与を支給する給費制が廃止され、その後は希望者に生活費を無料で貸し付ける貸与制に移行することが決まりました。法科大学院の授業料、生活費、修習中の生活費を合算すると1000万円ほどになるため、司法修習生の中には教育ローンなどの借金を抱えている人もいます。この制度変更が実施されれば、学費の負担と就職難がある上に司法修習中の生活費という不安材料が増えてしまいます。

 これでは、法科大学院も司法試験の合格率の低いところは、その運営を続けていくのは困難となるのは必定です。学生としては、大学院在学中に司法試験に受かる確率が低くなればなるほど抱える負債も大きくなり、就職先確保の期待値も下がってきます。

 さて、医学部も定員の増員が議論の対象になっています。民主党は、医学部入学定員を1.5倍にするという方針を打ち出していますが、大学医学部サイドは簡単に賛成できないとの見解を明らかにしています。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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