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報酬改定で骨抜きにされかねない「フリーアクセス」

2010/03/02

 以前、「診療報酬改定に見る“失うものの大きさ”」と題して、プライマリケアを担う開業医を軽視する改定により地域医療体制が崩壊すれば、患者や社会も大きな損害を受けるのではないかとの危惧感を語ってみました。

 ただし、読者の皆さんからのコメントは概して、「そうではないだろう」、「逆にもっとドラスティックな改定をすべき」という内容でした。今回は、そうしたコメントを踏まえた上で、診療報酬における“サービス単価”の話から一歩踏み出し、「医療のフリーアクセス」にまで対象を広げて考えてみたいと思います。

 ずいぶん前に、デンマーク在住の邦人造形作家、高田ケラー有子さんの子育てリポート(「日本人が見たデンマーク医療―出産、子育てを中心に」「続・日本人が見たデンマーク医療―救急、医事紛争を中心に」)をご紹介したことがあります。

 この高田ケラー有子さんの最新リポートは、このところのデンマーク医療の光と陰を分かりやすく描写しています。

 彼女の12歳の息子さんは、昨年の11月初旬に右足首を剥離骨折しましたが、その際に受けた医療のリポートは、ともするとわれら日本人が“いたれりつくせり”と幻想する北欧福祉社会の医療の現状を辛口に描き出しています。

 息子さんがこの時に受けた処置は、非常にいい加減で、完全なギプスをしてもらったのは骨折から2週間後のことです。しかも、再三電話をかけて、「痛がっているのでちゃんとしてほしい」と何度も訴えて、やっとのことでギプスをしてもらえたというのですから、何も言わなかったら、ギプスもしないままということです。

 「しなくても大丈夫」と言う医者に、ギプスをしていないのを見て「誰が最初に診たんだ?」と聞く医者―。どの医者を信じたらいいのかもわからない状況の中、12月中旬には、骨折から6週間経ったという理由で、X線を新たに撮ることなく、ギプスが外されます。触診ではまだ痛がっていたにもかかわらず…です。

 12月下旬には少し足を引きずりながら歩けるようになったものの、1月23日の夜、同じ部分に激痛が走って足首が腫れ、膝から下が紫色になっため、救急外来に行くことになりました。担当の医師から、もしかしたら「反射性交感神経性ジストロフィーかもしれない」と言われ、早速インターネットで調べてみると、いろいろと厄介なことも書いてあります。「もし本当にそうであれば、一刻も早くきちんとした診断を下してもらって治療をしないと手遅れになる」と、もう一度病院に電話を入れますが、なかなか埒が明きません。

 結局、「公立の病院には頼れない」と思い、私立の病院で診察してもらうことに。数日後、「小さいけれど、新たな骨折が見つかった」という報告を受け、骨折の治療をするということになりました。厄介な病気などではないことがやっと分かり、ようやく一安心できたという顛末です。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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