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禁断の果実?ケア支援機器の開発続々

2010/02/26

 2月19日付朝日新聞生活欄は、最近は自動で排泄ケアができる福祉用具の開発が進んでおり、メーカーの新規参入が相次いでいる現況を伝えています。

 最初に紹介されているのが、衛生用品メーカーのユニチャームの系列会社が昨年5月に発売した「尿吸引ロボ・ヒューマニー」。大人用の紙おむつは内側に「尿取りパッド」を敷き、これを交換しますが、この商品は代わりに特殊センサーを内蔵したパッドを使用します。尿を検知した瞬間にモーターが作動し、チューブを通して尿を本体タンクに自動吸引します。パッド表面の「ぬれ」はほとんどなく、漏れもないというのが特徴です。機械本体価格が10万円で、購入には介護保険が適用され自己負担は1万円。専用パッドは1枚300円前後とのことですが、従来のぬれて燃えにくい紙おむつに比べてごみの重さは10分の1で、処理後の二酸化炭素排出量を75%カットできるという環境への配慮も売りになっています。

 次に紹介されているのが、寝たままで排便できる「自動排泄処理装置」で、今年度から介護保険の補助対象になっています。広島市の「エバケアー」という企業が開発したこの装置は、マットレスの真ん中に穴があり、利用者は穴に股間が密着するように寝ます。穴からホースが本体に伸びていて、本体には洗浄水用と汚物用の2個のタンクが格納されています。排泄物が穴に出たのをセンサーが感知すると、本体のコンピューターが作動し、汚物を激しい水圧で砕きながら一瞬で吸い込みます。洗浄水タンクから温水が噴き出して股間を洗い、温風乾燥します。

 価格は60万9000円で、補助を使えば、約52万円で購入できるとのことですが、例えて言うと、装着できる洗浄便座付きトイレといった感じです。この製品では、排泄物が漏れ出さないようにおむつカバーのような布で利用者の股間を固定しますが、販売会社を立ち上げた関係者が介護の現場で、「身体拘束になりかねない」と指摘されて戸惑ったそうです。前にこのブログでお話しした拘束問題の難しさを思い出しました(2010.2.2「患者の身体拘束の是非とは?―被告病院が勝訴」)。

 どちらの商品も、排泄に悩む要介護者と、ケアの大変さに悩む介護者を、排泄ケアの苦悩から解放しようというところに開発の意図があるわけです。確かに夜間の排泄ケアは介護疲れの大きな要因の一つですから、福祉用具の導入で安らかな夜が得られるのならば、大きな福音といえるでしょう。

 もちろん、洗浄などが頻回になると臀部の皮膚がダメージを受けることもあり得るでしょうし、機械化がすべての問題を解決できるわけではありません。特に、頑張れば自力で排泄できるが、もう少し体力が落ちたら寝たきりになるかもしれないという方には、少々悪魔的な魅力を持つ悩ましいツールだといえます。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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