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終の棲家探しの難しさ―高齢者居住のインフラ事情

2009/03/17

 「日本在宅医学会大会」に出席するために訪れた3月上旬の鹿児島は、私のような北国の住人からすれば、まるで夏のような陽気でした。とんぼ帰りすると、わが家は雪の中。3月に入っても、雪はやまず、雪かきをしないと車も出せない日々が続きます。

 重い雪をスコップで取り除いているうちに、腰は痛くなるは、手袋をはめていても指はかじかむはで、年をとってもっと体力が衰えたら、この作業もいずれはできなくなるでしょう。こんな環境ですので、一戸建てからマンションに引っ越す高齢者は少なくありません。

 北国に限らず、高齢者には、「健康」「介護」「経済」「孤独」といった不安がつきものです。今回は、高齢者の終の棲家についてお話ししたいと思います。

 昔は、年をとってからの住まいは、「自宅」または「老人ホーム」という選択肢が定番でした。「雪かきも買い物も何のその」と元気ならば自宅、身の回りの世話が自分ではちょっとつらいならば老人ホームも考えてみましょうという感じでした。

 もちろん、判断基準は体力だけではありません。近ごろは入居一時金がさほど高額でないところも増えてきましたが、昔は介護まで保証されている有料老人ホームは、入居一時金が数千万円という例が多く、「そんなところへはとても入れないから家でがんばろう」といった面もありました。

 ところで、高齢者の居住サポートを目的とした法整備において、2001年というのはエポックメイキングな年でした。「高齢者の居住の安定確保に関する法律」、いわゆる高齢者居住法が施行されたからです。

 この法律には、高齢者が安心して優良な賃貸住宅に住み続けられるための様々な施策が定められています。具体的には、高齢者の入居を拒まない「高齢者円滑入居賃貸住宅」(高円賃)の登録・閲覧制度や、高齢者向けの賃貸住宅の建築・改良支援、終身建物賃貸借制度の創設などです。その後、2005年に改正され、高齢者専用賃貸住宅の規定などもできました。

 通常、高齢者が住宅を借りようとしても、家賃の不払い・病気・事故などに対する不安感から、高齢者の入居を拒否する大家が多いのが実情です。そこで高齢者居住法では、高齢を理由とした入居拒否を行わない賃貸住宅の普及や、入居者が家賃債務保証を受けられる「高齢者居住支援センター」の創設などを盛り込みました。

 「高齢者居住支援センター」は、この法の第78条の規定に基づき指定される組織で、都道府県知事の登録を受けた高円賃に入居する高齢者の家賃債務保証や、住宅金融支援機構のバリアフリーリフォーム融資にかかわる債務保証などの業務を行います。

 高齢者居住法で創設された高円賃は、高齢者の入居を拒まない賃貸住宅です。そのうち、もっぱら高齢者を賃借人とする賃貸住宅を、「高齢者専用賃貸住宅」(高専賃)といいます。高専賃として登録されるには、敷金・礼金以外の一時金の概算額、共同利用する居間・食堂・台所などの設備や日常生活にかかわるサービスの有無など、詳細な情報を公開しなければなりません。

 また、これとは別に、高齢者が安全に安心して居住できるようにバリアフリー化され、緊急時対応サービスの利用が可能で、都道府県知事の認定を受けたものに「高齢者向け優良賃貸住宅」(高優賃)があります。高優賃には、高齢者の生活を支援するための付加的サービスを提供したり、社会福祉施設に併設されているタイプもあります。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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