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医療従事者と患者の共闘型コラボ―1型糖尿病患者団体が研究助成

2009/02/06

 1月26日、1型糖尿病の患者やその家族らでつくるNPO法人「日本IDDMネットワーク」が、新たな治療法の開発支援を目的に、研究者に助成を行うと発表しました。

 このNPO法人は基金に集まった約200万円を、糖尿病の遺伝子治療を研究している阪大と、膵島移植後の拒絶反応を緩和する研究を行っている徳島大に助成するそうで、今後も基金に寄付を募り助成を続ける方針だそうです。このような、患者団体から大学などの研究者への助成という話は、あまり聞いたことがありません。

 私もいくつかの患者団体とお付き合いした経験があり、相談に乗ったり、オブザーバーとして企画にかかわったりしたこともあります。そんな中で知ったのは、患者団体を結成して闘病せざるを得ない難病の患者・患者家族の皆さんは、まず経済的に大変だということです。

 公的助成の手厚い疾患ならば、医療費が全額免除になるなど、闘病に専念できなくはないでしょう。しかし、そうした疾患ではない上に、治療費が多額にかかり、しかもある程度の収入もあって生活保護の対象に当たらないというタイプの患者・患者家族の方々は、病気だけでなく、経済面での苦労にも立ち向かう必要が出てきます。

 例えば、2007年にやっと「がん対策基本法」が施行されましたが、癌治療の地域格差や均てん化の問題が依然として強く語られるのも、似た側面があります。難病との闘いにおいては、「医療の質」以前に、克服しなければならない多くの課題があるのです。

 このような苦境を乗り越えるために、「同病相哀れむ」ならぬ「同病共に闘う」という形で患者団体が組織されるわけですが、その運営は資金的には楽ではありません。今お話したように、経済的に余裕のない患者とその家族が集うわけですから、会費の納入がもめ事の種になることもままあります。運営方針を巡り、正論は言っているものの会費は未納の会員と、会費をきちんと払っている会員との間で、感情的な対立が生じる例も見られます。

 このような難病患者・患者家族の皆さんが大変な苦労をして寄付した基金から出る研究助成金ですから、本当に貴重なお金です。お金に色はついていないといいますが、患者とその家族の強い思いを受けたお金が先駆的な医療研究を支えるという点で、医療従事者と患者の間に新たな素晴らしいコラボレーションが生まれたといってよいでしょう。

 従来、医療従事者と患者団体は、ともすれば、対立しがちな関係にありました。医療者にとっては、攻撃的に医療者を叩くのが患者団体。逆に患者団体や家族からは、味方のように見えて、実はなかなかサポートしてくれないのが医療従事者、という構図です。

 ところで、先般、兵庫県で県立柏原病院の小児科を守る会ができ、地域医療を守ろうという地域住民と医療従事者のコラボレーションが生まれました。そのホームページには、次のように書かれています。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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