日経メディカルのロゴ画像

ドクターカーが緊急自動車になる!―総論賛成、だけど運用に不安も…

2009/01/20

 昨年から、医師が緊急治療に駆けつける際に使う自動車を、「ドクターカー」として緊急自動車の1つに認めることを検討中というニュースを何度か見聞きしていました。

 結論はまだ出ないのかな、と思っていたところ、数日前のテレビや新聞で、この件に関する報道がありました。国土交通省と警察庁が協議の上、今年4月1日から、終末期患者の緊急治療に駆けつける医師の車を緊急自動車に認定できるよう、道路交通法など関連する法令を改正することを決めたとの内容です。

 現在、緊急自動車としては、救急車、消防車、警察車、臓器移植用緊急輸送車、血液輸送車、保線作業車、検察庁車、緊急警備車、防衛庁車、電波監視車、公共応急作業車、護送車、交通事故調査用緊急車などが認められています。

 緊急自動車である警察用自動車に誘導されている自動車なども、緊急車両に準じるものとして緊急走行が許されているので、いざという時に韋駄天の仕事につく車はたくさんあります。

 緊急自動車となれば、赤色の警光灯を点滅させながら、サイレンを鳴らして走行する必要があります。また、緊急自動車には車色が定められているものがありますが、今回の医師緊急自動車は、救急車のように車色を白色に限定しないような法改正になるということです。

 1月13日付毎日新聞によると、今回の改正は、昨年10月、政府の構造改革特区で認められた栃木市のある在宅ホスピスによる取り組みがきっかけだといいます。

 この地域では、緩和ケア専門医が少なく、ケースによっては患家への移動が約100キロにもなるそうです。ここで末期癌患者の在宅医療を担う「在宅ホスピスとちの木」(栃木市、渡辺邦彦所長)の提案で認められた規制緩和が、今回の法改正につながったというのです。

 確かに、在宅で治療を受ける癌患者は少なくありませんが、医師が緊急治療に駆けつけようにも、渋滞に巻き込まれれば適時な治療が困難になりますし、かといってその都度その都度、警察車両の先導を求めるということも実際にはできません。

 そんなときに、ドクターカーが緊急自動車として可及的速やかに患家にたどり着けるという制度になれば、患者側にとっても医療側にとっても、1つの福音になるでしょう。

 ただ、総論としては賛成ですが、心配な点もいくつかあります。何人かの医療者の声を聞いてみましたが、私と同様の反応でした。

 まず、1つ目は、緩和ケアで迅速な対応ができるようになるのは良いが、患者さんの方で何か不安なことが生じたときに、「緊急自動車でサッと駆けつけてくれて当然」という感覚が生まれないかという懸念です。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

この記事を読んでいる人におすすめ