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骨髄移植のインフラを巡る困った話

2008/12/26

 このところ、米国製の医療機器が在庫不足となり、わが国で骨髄移植が2月以降、実施困難になりそうだというニュースが流れています。この事情というのは、次のような「風が吹けば桶屋が儲かる」の逆さのような話です。

 米バクスター社の骨髄液を採取して濾過する器具を製造する部門が、昨年3月投資グループに売却され、その結果米国工場が閉鎖されたそうです。バクスター社の日本法人は在庫が切れる来年1月以降、この器具の製造を引き継ぐ中米にある別会社から輸入する予定だったが、その稼働が3月以降にずれ込み、患者の血栓防止に不可欠な器具が手に入らなくなる。従って、骨髄移植の実施が困難になるという話です。

 厚生労働省もバクスターの日本法人に事情聴取するそうですが、事態は国際的、しかもモノの製造ということで、すぐにどうにかなる話ではなさそうです。

 現代医療は、医学に基づいてなされますが、検査や治療となると医学というよりは、工学、医療というよりは、テクノロジーです。このところ日本は医師不足に苦しんでいますが、医療に必須の医療資材の不足も、これらに勝るとも劣らない苦境ということになります。

 ところで、しばらく前にバクスター社が登場するヘパリン問題(2008.3.17「ヘパリン回収問題をトレースする」)をお知らせしましたが、このときのボディーブローが効いてこういう事情に至ったのかどうか、その細かいバックグラウンドは分かりません。

 GMなどビッグスリーの米連邦破産法第11条の適用申請カウントダウンという危機が語られる中、医薬品・医療機器業界にも類縁の話が起こってもおかしくはありません。米バクスター社の製造部門売却が、今回の金融危機にどのくらい関係しているかは分かりませんが、ヘパリン汚染問題が影響していても何らおかしくはない話です。

 ここで話を自動車業界にシフトすると、GMのこのたびの危機についても、医療との絡みが無視できません。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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