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草の根医療の再構築―ある過疎地リポートを読む

2008/12/19

 今回は、日経ビジネスオンラインの12月16日付メールマガジンで知ったニュースの話題です。「地域医療を“貸しはがし”から救った草の根の力」と題した山形県の医療生協病院のサバイバル物語は、未曾有の世界的同時不況の中でこれからどうなるだろうと危惧される地域医療の進みうる一つの道標を教えてくれます。

 記事の概要は、次のようなものです。

 金融庁の監査を控えた山形県内のある地方銀行で、ある医療生活協同組合への融資が飛びぬけて大きく、その点を指摘されれば融資を引き揚げざるを得なくなるかもしれない――いわゆる“貸しはがし”の危機が勃発した。

 消費生活協同組合法(生協法)の改正、生協も会社法に準じた経営が求められるようになり、仮に貸しはがしという事態になれば、地域に展開している医療・介護関連の事業が頓挫することになる。そのような状況で、監査結果は、意外にも融資の継続を認めるものだった。金融庁の調査官は「今後もずっとサポートしてあげてください」という一言を地銀の担当者に残して去っていった。

 この一連の出来事の主役は、鶴岡市を拠点とする「庄内医療生協」だ。この医療生協が危機に対して、組合員からの出資総額27億円、新規の出資金は年間3億円、債券は2億円を集めたのだ。生協の理事は、「それまでほとんど意識することはありませんでしたが、地域の組合員さんに支えられ、守られていることを実感しました」と述べたそうです。

 この庄内医療生協の中心となっているのが鶴岡協立病院です。医療過疎といわれるこの地域で、1976年に開始された訪問看護をはじめ、医療相談室、リハビリテーション病院開設、6時夕食(導入当時は5時が当たり前)など、地域初・県内初の取り組みを次々と行ってきたそうです。

 その後も組合員の声に応えて、1996年に他の地域団体と協同で老人保健施設を開設していますが、8カ月という短い間に、建設資金として5000人の個人から1億円の寄付を集めています。中小零細企業しかない土地で、これだけの草の根の資金を集めることができた歴史がありました。

 鶴岡市の中心的医療機関は、鶴岡市立荘内病院と鶴岡協立病院ですが、市立病院は2003年に200億円の血税を投入して大規模病院にリニューアルしました。協立病院のほうは急性期病院である市立病院から短期間で退院する患者さんを受け入れる後送病院機能を引き受けて、機能分化を図ることになります。

 この地域は「地域の2軒に1軒が組合員」という組合員比率で非常に組織率が高く、この市立病院に入ってくる200億円のうち100億円を組合員が出していることになります。市立病院は税金、組合病院は組合員負担と形は違いますが、公的な医療を自分たちでサポートしようという気風には共通性があります。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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