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医療法人制度はどこに行くパート2―税制との関係を読む

2008/11/28

 昨年10月、本ブログで医療法人制度はどこに行く」というお話をして、既存の出資持ち分の定めのある社団医療法人が、改正医療法で新規設立が不可能となり、「当分の間」附則第10条2項によって旧医療法第56条が適用されること、また持ち分の定めのない法人に変身しようとしても、まだ厚生労働省や財務省(国税庁)といった省庁間で調整で課税問題がクリアになっていないため実行困難になっている状況をお知らせしました。

 この9月3日、国税庁のホームページに『「贈与税の非課税財産(公益を目的とする事業の用に供する財産に関する部分)及び公益法人に対して財産の贈与等があった場合の取り扱いについて」等の一部改正について』という法令解釈通達がアップされました。

 まず、この課税問題をご説明する前に、改正医療法のもとでの社団医療法人のあり方を復習してみます。

 社団医療法人の形態は、以下の4つの基本形態に分かれます。まず、既存の通常型は、「持ち分の定めのある医療法人」ですが、出資者には完全な持ち分があり、このことから残余財産は出資者に帰属することになります。改正医療法で、2007年4月1日以降は設立できなくなっています。

 新設できないことから、出資額限度医療法人や基金拠出型医療法人へ移行することができますが、出資の扱いで税法上の解釈問題が生じるので、今までなかなか実行されていません。今回のブログも、このたび出された国税庁通達でさてどうなるかというところが問題の関心です。

 次に、既存の「持ち分の定めのある医療法人」を修正しようというのが、「出資額限度医療法人」です。出資者には持分はありますが、返還を受けることのできる額は出資額が上限となります。

 内部留保が溜まっている医療法人で、出資者が脱退するというときに、どれだけの返還金を受け取ることができるかという「持ち分の定めのある医療法人」でよく起こるトラブルは、このような法人形態をとり返還を受けることのできる額を出資額を上限とすることで解決できますが、これも2007年4月1日以降は新設できないことになっています。こちらも持ち分の定めのある医療法人や基金拠出型医療法人へ移行することができるようにしていることから、あくまで便宜的・過渡期的形態ということになるでしょう。

 改正医療法においての通常型は、「基金拠出型医療法人」です。出資者には持分はありませんが、拠出額を限度として基金は返還されることにはなります。基金拠出型医療法人の基金は、出資金とは異なります。

 基金とは、「一定の目的のために積み立て、または準備しておく資金」にすぎず、社員が社団の構成員として拠出する出資金とコンセプトが違っていて、基金の拠出と社員の地位は切り離されています。

 基金は医療法人の債務とまではいえないまでも、医療法人を設立した仲間が拠出した出資金とはかなり遠く、どちらかというと債務に近いイメージです。2007年4月1日以降に設立する医療法人は、原則として基金拠出型医療法人になります。これが今後の基本型ですので、持ち分の定めのある社団医療法人や出資額限度医療法人へ移行することはできません。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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