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舛添vs石原論争を読む―どうなる?東京の救急医療

2008/11/01

 10月4日、脳出血を起こした妊婦(36歳)が、都立墨東病院など8病院で受け入れがかなわず3日後に死亡した事件は、既にマスコミに再々報じられたところですので、その事件自体についての紹介は控えます。

 本稿では、その後の舛添厚生労働大臣と石原東京都知事の論争を中心に東京の救急医療について考えてみたいと思います。舛添要一厚労大臣は10月24日の閣議後会見で、この事件について東京都への怒りをあらわにしました。都立墨東病院への調査に当たり、当初東京都が「準備できない」と受け入れ拒否しようとしたことを明らかにした上で「都の姿勢に怒りを覚える」と東京都を批判しました。

その勢いはいつもの舛添節を超える苛烈なものでした。

 他方、これを受けて石原慎太郎東京都知事は同日の定例会見で、今回の事件は医師不足によるもので国の責任だとし、舛添氏に対して猛反発する論陣を張りました。

 都知事は会見の冒頭で、「大見えを切っていつも空振りする。事実を分析し、掌握してからものを言ってもらいたい」と舛添氏の発言を批判し、舛添氏が閣議後会見の後に墨東病院を訪れ事情を聴取した後、批判がトーンダウンしたと指摘しました。

 石原都知事の論旨は、「医者の人数が多かったら死亡にまで至らなかったかもしれない。医者の数を増やすのは国の責任だ」「厚労省の医療行政が間違ってきて、医者が足りない。こういう事態をつくったのは国じゃないか」と、国の責任を非難するものです。

 石原都知事は「年金の問題も大見え切るけど空振り。けしからん役人を代弁している印象にしか映らない」と舛添氏個人をも批判しました。一方の舛添大臣も視察に先立ち、「報告が2週間も厚労省に上がってこない。非常に重く受け止めている。とても都には任せられない」と話していますから、この日はお互いに歯に衣着せぬガチンコ論争が交わされた一日でした。

 これに比べ、亡くなった妊婦のご主人が10月27日に厚生労働省で開いた記者会見でのコメントは、医療現場や行政を責めるどころか、病院の医師たちを気遣うものでした。「妻が浮き彫りにしてくれた問題を、力を合わせて改善してほしい。安心して赤ちゃんを産める社会になることを願っている」「何かが変われば『これを変えたのはおまえのお母さんだよ』と子供に言ってあげたい」「墨東病院の医師も看護師も本当に良くしてくれた。彼らが傷つかないようにしてほしい」。

このような自制的なコメントを聞くと、国の省庁の長と首都の首長の仁義なきバトルが非常に情けないものに感じられます。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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